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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)15

事件名

 退去強制令書発付処分等取消請求事件

裁判年月日

 平成18年1月25日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 法務大臣がした出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)49条1項の異議の申出が理由がない旨の裁決(法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長の裁決を含む。)の取消訴訟において,同法(前記改正前)24条各号の一に該当する旨の入国審査官の認定の違法を主張することができるとされた事例 2 出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)24条4号イ(資格外活動)にいう同法19条1項に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を「専ら行つていると明らかに認められる」場合の意義 3 留学の在留資格で在留し,出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)24条4号イ(資格外活動)に該当するとの入国審査官の認定及び同認定に誤りがない旨の特別審理官の判定を受け,法務大臣に異議の申出をした者に対し,法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長がした前記異議の申出に理由がない旨の裁決の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)24条各号の一に該当する旨の入国審査官の認定は,行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分に当たり,前記認定を不服とする容疑者が行う口頭審理の請求に対する特別審理官の判定及び同判定を不服とする容疑者の行う異議の申出に対する法務大臣の裁決(法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長の裁決を含む。)は,いずれも行政事件訴訟法3条3項にいう裁決に当たるとした上,出入国管理及び難民認定法は,特別審査官に対する口頭審理の請求及び法務大臣に対する異議の申出という2段階の不服申立手続を設け,退去強制事由の有無について争う機会を確保するとともに,各不服申立期間を3日以内という極めて短いものとし,他方,法務大臣に対する異議の申出の手続においては,在留特別許可を付与するか否かについての判断をもするものとして,当該容疑者に退去強制を受けさせるかその者に本邦における在留を特別に認めるかを迅速かつ適正に確定させる仕組みを採用していることなどからすれば,同法は,前記入国審査官の認定に不服がある場合には,前記2段階の不服申立てを経るものとした上,なお不服がある場合には,法務大臣の異議の申出が理由がない旨の裁決に対してのみ取消訴訟を提起することができるものとし,当該取消訴訟において退去強制事由に該当する旨の入国審査官の認定の違法を争わせる仕組み(裁決主義)を採用したものと解するのが相当であるとした事例 2 出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)の資格外活動に関する諸規定及び同法所定の在留資格制度の趣旨にかんがみれば,同法24条4号イにいう同法19条1項に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を「専ら行つていると明らかに認められる」場合とは,当該外国人に認められた在留資格に係る在留目的が実質的に変更したと評価し得る程度に同項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行っている場合をいうものと解するのが相当であり,当該場合に該当するか否かについては,当該外国人に認められた在留資格の内容,当該在留資格に関する法の規制等にかんがみ,当該外国人の行っている資格外活動の内容,態様,程度,当該外国人に認められた在留資格に係る活動の遂行状況,当該活動の遂行に対する阻害の有無,程度等を総合勘案して決するのが相当である。 3 留学の在留資格で在留し,出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)24条4号イ(資格外活動)に該当するとの入国審査官の認定及び同認定に誤りがない旨の特別審理官の判定を受け,法務大臣に異議の申出をした者に対し,法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長がした前記異議の申出に理由がない旨の裁決の取消請求につき,前記の者は,相当以前の時期から,その在留中の経費の大部分を実質的にみて報酬を受ける活動を行うことにより支弁していたものであり,その在留目的が実質的に変更したと評価しうる程度にまで資格外活動を行っているものといわざるを得ず,同号イにいう同法19条1項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者に該当し,また,在留特別許可を与えることなく異議の申出が理由がないとした入国管理局長の判断が,その裁量権の範囲を超え,又はその濫用があったものとして違法であるとは認められないとして,前記請求を棄却した事例
 

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