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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行コ)205

事件名

 事業認定取消・収用裁決取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成12年(行ウ)第349号事業認定取消請求事件(原審第1事件。以下当審においても「第1事件」という。),平成14年(行ウ)第421号収用裁決取消請求事件(原審第2事件。以下当審においても「第2事件」という。))

裁判年月日

 平成18年2月23日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 一般有料自動車専用道路及びインターチェンジの新設工事等の事業に係る起業地について,建設大臣(平成11年法律第160号による改正後は国土交通大臣)が行った土地収用法17条に基づく事業の認定の取消しを求める訴えにおいて,起業地内の不動産につき賃借権準共有持分を取得した者らの原告適格が,肯定された事例 2 一般有料自動車専用道路及びインターチェンジ等の新設工事等の事業に係る起業地について,当時の建設大臣(平成11年法律第160号による改正後は国土交通大臣)が行った土地収用法17条に基づく事業の認定の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 一般有料自動車専用道路及びインターチェンジの新設工事等の事業に係る起業地について,建設大臣(平成11年法律第160号による改正後は国土交通大臣)が行った土地収用法17条に基づく事業の認定の取消しを求める訴えにおいて,起業地内の不動産につき賃借権準共有持分を取得した者らの原告適格につき,土地収用法上の起業地内の不動産に権利を有する者は,違法な認定がされれば,それによって自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれが生じることとなるから,土地収用法第3章の認定の手続,要件等を定めた規定は,起業地内の不動産につき権利を有する者個々人の利益をも保護することを目的とした規定と解することができるとした上で,上記の者らは賃借権についての登記を経由しているから,登記簿の記載どおり賃借権の準共有持分を取得するなどしたと推認でき,上記権利設定の動機が圏央道の建設に反対することにあったとしても,そのことから前記賃借権の準共有持分の取得が無効であるとか,法的保護に値しないとか解することはできないとして,前記の権利者らの原告適格を肯定した事例 2 一般有料自動車専用道路及びインターチェンジ等の新設工事等の事業に係る起業地について,当時の建設大臣(平成11年法律第160号による改正後は国土交通大臣)が行った土地収用法17条に基づく事業の認定の取消請求につき,事業認定庁が,申請に係る事業につき,事業認定を行うか否かを決定するに当たっては,これが同法20条各号の要件を充足するか否かを検討することを要し,また,これをもって足りるのであって,同法1条の規定等にかんがみれば,その土地が当該事業の用に供されることによって得られるべき公共の利益と,その土地が当該事業の用に供されることによって失われる私的な利益及び公共の利益の比較衡量をした結果,前者が後者を優越する場合に,同法20条3号の「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」という要件を充足するものと解するのが相当であり,この要件の存否についての判断は,多種・多様な公共の利益と私的な利益の諸要素,諸価値の比較衡量に基づく総合判断として行われるべきものであって,そのためには性質上必然的に専門技術的,政策的な判断を伴うものであって,事業認定庁には,その判断において裁量権が与えられているということができるが,仮に事業認定庁が,本来最も重視すべき諸要素,諸価値を不当に軽視し,その結果当然尽くすべき考慮を尽くさず,または本来考慮に入れるべきでない事項を考慮に入れるなどして,その結果判断に影響を生じさせたというような場合には,その事業認定は,裁量権の逸脱,濫用として違法になるものと解するのが相当であるとした上で,前記道路は,道路として重要な機能を果たすものであり,他方,起業地の権利者らの権利自体の喪失については,法による補償を受け,特別の損失は生ぜず,また,前記事業により発生することが予想される騒音,大気汚染等は環境評価基準以下であるなど,前記事業により得られる公共の利益は,本件土地が本件事業の用に供されることによって失われる私的な利益及び公共の利益に優越すると認められるから,事業認定庁が同法20条3号の要件を充たすと判断したことに裁量権の逸脱,濫用があると認めることはできないとして,前記請求を棄却した事例

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