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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行コ)2

事件名

 障害基礎年金不支給決定取消等請求控訴事件

裁判年月日

 平成18年2月22日

裁判所名

 広島高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 大学在学中に事故又は疾病によって障害を負いながら,国民年金に任意加入していなかったために障害基礎年金を支給しない旨の各処分を受けたいわゆる学生無年金障害者らが,同人らに適用される国民年金法(平成元年法律第86号による改正前)7条1項1号イが20歳以上の学生を国民年金の強制適用の対象から除外していること,及び同法30条の4が20歳前の傷病により障害者となった者に無拠出制の障害福祉年金又は障害基礎年金を支給することを定めておきながら,20歳以上の学生についてはその対象としていないことが,それぞれ憲法14条1項,25条に違反し無効であるとしてした前記各処分の取消請求が,棄却された事例 2 大学在学中に事故又は疾病によって障害を負いながら,国民年金に任意加入していなかったために障害基礎年金を支給しない旨の各処分を受けたいわゆる学生無年金障害者らが,国に対して,国が昭和34年に20歳以上の学生につき,強制適用から除外した上,障害(福祉)年金の受給対象から除く規定を立法し,その後これらの規定を改正しなかったこと,任意加入制度についての告知,聴聞の機会を保障せず,またその周知を怠ったことについて,国会及び国会議員に立法作為,不作為の違法が,内閣に法案提出行為等の違法があったとしてした国家賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 大学在学中に事故又は疾病によって障害を負いながら,国民年金に任意加入していなかったために障害基礎年金を支給しない旨の各処分を受けたいわゆる学生無年金障害者らが,同人らに適用される国民年金法(平成元年法律第86号による改正前)7条1項1号イが20歳以上の学生を国民年金の強制適用の対象から除外していること(以下「強制適用除外規定」という。),及び同法30条の4が20歳前の傷病により障害者となった者に無拠出制の障害福祉年金又は障害基礎年金を支給することを定めておきながら,20歳以上の学生についてはその対象としていないこと(以下「若年障害者支給規定」という。)が,それぞれ憲法14条1項,25条に違反し無効であるとしてした前記各処分の取消請求につき,学生は定型的にみて稼得活動に従事していない者といえるため,学生を強制適用から除外した強制適用除外規定の立法理由には合理性があり,また,20歳未満の者は,被保険者の範囲に含まれないため20歳前に起こり得る障害につき保険料を拠出してこれに備えるということが不可能である一方,若年で重い障害状態にある場合には最も所得保障をする必要性が高く,拠出制の年金を補完する福祉政策的措置を講ずることが相当であることから,受給対象者を20歳未満の者と定めた若年障害者支給規定の立法理由には合理的な根拠があり,かつ,その区別が立法理由との関連で著しく不合理でなく,いまだ立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められるから,憲法14条1項に反するとはいえず,また同法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは抽象的,相対的な概念であって,同条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は立法府の広い裁量にゆだねられているところ,強制適用除外規定及び若年障害者支給規定は著しく合理性を欠くものとは認められず,明らかに裁量の逸脱,濫用とみざるを得ないような場合ではないことから,同条にも違反するとはいえないとして,前記請求を棄却した事例 2 大学在学中に事故又は疾病によって障害を負いながら,国民年金に任意加入していなかったために障害基礎年金を支給しない旨の各処分を受けたいわゆる学生無年金障害者らが,国に対して,国が昭和34年に20歳以上の学生につき,強制適用から除外した上,障害(福祉)年金の受給対象から除く規定を立法し,その後これらの規定を改正しなかったこと,任意加入制度についての告知,聴聞の機会を保障せず,またその周知を怠ったことについて,国会及び国会議員に立法作為,不作為の違法が,内閣に法案提出行為等の違法があったとしてした国家賠償請求につき,上記いずれの時点においても,学生を強制適用の対象にしたり,あるいは障害(福祉)年金の支給対象にするなどの措置を講じなかったからといって明らかに不合理であるとはいえないこと,前記各処分は障害基礎年金の受給を許さないことを超えて,被処分者の権利や利益に制限を科す不利益処分であるとはいえないから,憲法31条の適用対象とはならず,包括的抽象的な規定である同法13条を根拠に前記各処分に対して適正手続の保障を及ぼすこともできないことから,国家賠償法上の違法は認められないとして,前記請求を棄却した事例

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