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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)79

事件名

 上陸許可取消処分取消等

裁判年月日

 平成18年3月28日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 9歳の時に両親に連れられて本邦に不法上陸し,日本において教育を受けていた中国国籍を有する当時17歳の男性が,出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)49条1項に基づく異議申出をしたのに対し,法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長がした当該異議の申出には理由がない旨の裁決は,在留特別許可を認めなかった点で違法であり,同裁決を前提とする入国管理局主任審査官がした退去強制令書の発付処分も違法であるとしてした当該裁決及び処分の取消請求が,いずれも認容された事例

裁判要旨

 9歳の時に両親に連れられて本邦に不法上陸し,日本において教育を受けていた中国国籍を有する当時17歳の男性が,出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)49条1項に基づく異議申出をしたのに対し,法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長がした当該異議の申出には理由がない旨の裁決は,在留特別許可を認めなかった点で違法であり,同裁決を前提とする入国管理局主任審査官がした退去強制令書の発付処分も違法であるとしてした当該裁決及び処分の取消請求につき,前記男性には不法上陸,不法滞在につき何らの帰責性もないのであるから,退去強制事由に該当することから類型的に我が国に滞在させることが好ましくない外国人と評価することはできず,より慎重な吟味が必要であり,また,通常の不法上陸,不法滞在の事案とは異なり,本邦における生活,学習等の実績,将来の設計,それらが国外退去させられることによって失われる不利益を軽視することは不相当であるところ,入国管理局長は,前記裁決に際し,前記男性の具体的な学習状況や生活状況,日本語の能力,中国語の能力,将来についての考察態度や判断能力等について十分考慮することがなかったと推認され,前記男性が,日本の学校で約8年間学習し,日本人の子供と全く変わりのない生活をするまでに至り,今後とも学習を継続し,日本社会に溶け込んで,日本社会に貢献することも十分に考えられ,自分の人生や将来についても真しに考察して判断する能力があったことからすると,入国管理局長が,前記男性の学習状況や生活状況,判断能力等について適正に認定していれば,在留特別許可を付与した可能性が相当に高いのであるから,前記男性に在留特別許可を付与しないとする入国管理局長の判断は,全く事実の基礎を欠くことが明らかであり,裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるというべきであるから前記裁決は違法であり,また,同裁決に従ってされた前記発付処分も違法であるとして,前記各請求を認容した事例

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