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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行コ)189

事件名

 公金支出差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(行ウ)第44号)

裁判年月日

 平成16年12月21日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 普通地方公共団体においてする目節間における予算の流用
2 市議会により翌年度へ繰越明許費として繰り越すことを計上した予算案を否決された再開発事業に係る都市計画に関する図書作成業務委託料及びまちづくり整備計画作成業務委託料について,翌年度の予算において同一目内の節と節の間で流用した上で支出命令をしたことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人に支出した委託料相当額の損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 地方自治法上,目節の間において予算を流用することは禁止されていないが,その流用も無制約に許されると解すべきではなく,普通地方公共団体の長が,普通地方公共団体の経費につき,議会が当該事業の実施を否定して予算から削除した事業の費途に充てることを目的として,予算流用の方法を用いてする予算執行は,議会に与えられた予算議決権を一部空洞化させ,議会による予算統制を定めた地方自治法の趣旨に反するとともに,普通地方公共団体の長が当該目節の区分に従って歳入歳出予算を執行するための手続を設けた趣旨にも反するものであるから違法であり,前記目的をその目的とする財務会計行為も同様に違法である。
2 市議会により翌年度へ繰越明許費として繰り越すことを計上した予算案を否決された再開発事業に係る都市計画に関する図書作成業務委託料及びまちづくり整備計画作成業務委託料について,翌年度の予算において同一目内の節と節の間で流用した上で支出命令をしたことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人に支出した委託料相当額の損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求につき,前記の予算流用は,流用後の経費を市議会がその実施を否定して予算から削除した前記各委託の費途に充てる目的でされたものであって違法であり,このような予算の流用を前提として行われた前記支出命令も市議会の意思に反して違法であるが,市は,前記支出命令の基礎となった契約の成果物として調査報告書等を受領することによって,前記支出命令により支出した委託料に見合う成果物を得たものと認められ,また,前記各業務は客観的にみて,市にとって必要なものであったというべきであり,市は,その成果物たる前記調査報告書等の受領により利益を得ているから,市に前記委託料相当額の損害が発生したと認めることはできないとして,前記請求を棄却した事例

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