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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成15(行ウ)1

事件名

 首都機能移転誘致支出金返還請求事件

裁判年月日

 平成18年9月28日

裁判所名

 岐阜地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 同一の請求権につき,地方自治法(平成14年法律第4号による改正後)242条の2第1項4号に基づく請求をすると同時に,同法242条の2第1項3号に基づく請求をすることの可否 
2 県が首都機能移転誘致のために公金を支出したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,県知事に対してされた,当時の県知事個人及びこれらの支出に係る財務会計行為の専決権限を有していた県の職員個人に対し損害賠償請求又は賠償命令を行わないことの違法確認請求及び同項4号に基づき前記損害賠償請求又は賠償命令をすることを求める請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 1 地方自治法242条の2第1項3号に基づく請求(以下「3号請求」という。)と同法(平成14年法律第4号による改正後)242条の2第1項4号に基づく請求(以下「新4号請求」という。)が独立の訴訟形態として認められ,3号請求の補充性を認める規定ぶりとはなっておらず,その効果に着目しても,3号請求は請求権の行使を怠る事実の違法の確認であるのに対し,新4号請求は損害賠償等の請求又は賠償命令の発令の義務付けというものであり,なお差異があることにかんがみれば,新4号請求がその請求の対象となっている当該請求権の行使を怠る事実の違法確認を求める3号請求に係る訴えに併合提起されている場合に,3号請求が訴えの利益を欠いて不適法になるものではない。 
2 県が首都機能移転誘致のために公金を支出したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,県知事に対してされた,当時の県知事個人及びこれらの支出に係る財務会計行為の専決権限を有していた県の職員個人に対し損害賠償請求又は賠償命令を行わないことの違法確認請求及び同項4号に基づき前記損害賠償請求又は賠償命令をすることを求める請求につき,首都機能移転実現についての要望活動やPR活動は県の事務に該当するから,これらの活動のために支出された前記支出は県の事務について支出されたものといえ,前記支出が行われた当時において,首都機能の移転と県への誘致のために最少の経費で最大の効果をあげる方法としてもっとも適当な手段がどのようなものであり,必要かつ最少の限度を超えた支出を行わないようにするにはどのような政策をとるべきかを県が一義的に判断することは困難であったといえるから,前記支出を行うか否か,支出を行うとしていくら支出するかの判断は,県の長である県知事の合理的裁量にゆだねられていると解すべきであるとした上,前記支出がされた当時の状況に照らせば,当時,県が首都機能移転誘致の実現のための対策として,国に対する要望活動等を行ったことには合理性があり,前記支出はいずれも県知事の合理的裁量の範囲を逸脱した違法なものとはいえないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

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