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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行コ)22等

事件名

 同和奨学金賠償命令履行請求各控訴事件(原審・京都地方裁判所平成14年(行ウ)第44号〈第1事件〉,平成15年(行ウ)第21号〈第2事件〉)

裁判年月日

 平成18年3月31日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 市が,自立促進援助金支給要綱に基づき,地域改善対策就学金貸与規則等の規定による奨学金等(同和奨学金等)の貸与を受けた者に対し,貸与終了後,その返還のために自立促進援助金を支出したことが違法であるとして,その当時の市長の職にあった者に対しては地方自治法242条の2第1項4号に基づき損害賠償を請求することを,市の副市長の職にあった者に対しては同号ただし書に基づき賠償命令をすることを,それぞれ求める請求につき,民事訴訟法248条の趣旨に則って損害額が認定され,いずれも一部について認容された事例

裁判要旨

 市が,自立促進援助金支給要綱に基づき,地域改善対策就学金貸与規則等の規定による奨学金等(同和奨学金等)の貸与を受けた者に対し,貸与終了後,その返還のために自立促進援助金を支出したことが違法であるとして,その当時の市長の職にあった者に対しては地方自治法242条の2第1項4号に基づき損害賠償を請求することを,市の副市長の職にあった者に対しては同号ただし書に基づき賠償命令をすることを,それぞれ求める請求について,前記要綱には,同和奨学金等の貸与を受けた者のうち,その属する世帯の所得,就労等の生活実態から貸与を受けた同和奨学金等を返還することが困難であると市長が認めた者に対し前記援助金を支給すると規定されているところ,同和地区における生活実態が全体としては改善され,同和奨学金等の返還が必ずしも困難ではなくなった者も一定割合で生じてきていることも推認されること等から,遅くとも平成13年度の前記援助金については,前記要綱の支給基準,認定方法等について具体的な基準を定めず,各申請者から収入,家族状況等に関する客観的資料の提出も求めないまま,申請者を一律に同和奨学金等を返還することが困難であるものと認め,何ら審査をせずに援助金の支給を継続していることは,内容的にも手続的にも不適切であり,裁量権の行使としての合理性を認めることができず,少なくとも,同年度及び平成14年度の各前記援助金のうち新規に前記援助金を支給することとした借受者に係る同援助金については,裁量権の逸脱があったものと解するのが相当とした上,同援助金のうち,本来は前記援助金の支給対象外とすべき借受者に対して支給された前記援助金をもって,市の損害と判断するのが相当であるが,そもそも前記援助金の支給基準が明らかでないため,平成16年に改正された前記要綱及び別に定められた自立促進援助金支給基準に基づき,前記支給対象外とすべき借受者に対して支給された前記援助金の額を推計し,特にその一部については個別情報がないまま推計したため,厳密な立証がされたものとは言い難いものの,なにがしかの損害が生じていることは明白であるなどとして,民事訴訟法248条の趣旨に則って,前記推計額を損害額と認定して,前記請求を一部認容した事例

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