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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)28

事件名

 損害賠償請求権行使請求事件

裁判年月日

 平成18年11月15日

裁判所名

 横浜地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 株式会社が第三セクター方式で設立されるに際して,市が都市銀行及び信用金庫との間で前記各金融機関の株式会社に対する融資について締結した損失補償協定が,法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律3条に違反した無効なものであるとされた事例 
2 市が,株式会社が第三セクター方式で設立されるに際して都市銀行及び信用金庫との間で前記各金融機関の株式会社に対する融資について締結した損失補償協定に基づいてした損失補償金の支出が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長に対してされた,市長個人に損害賠償をすることを求める請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 株式会社が第三セクター方式で設立されるに際して,市が都市銀行及び信用金庫との間で前記各金融機関の株式会社に対する融資について締結した損失補償協定につき,法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(以下「財政援助制限法」という。)3条は,政府又は地方公共団体が「法人の債務」について「保証契約」をすることを禁じており,ここにいう「保証契約」に民法上の保証契約が含まれることは明らかであるが,政府又は地方公共団体の不確定な債務がむやみに増加することを防止し,もって財政の健全化を図るという同条の趣旨からすると,これに類し同様の機能,実質を有する合意も同条の規制に服するものと解するのが相当であるとした上,前記協定は,民法上の保証契約とはいえないまでも,それと同様の機能,実質を有するものであって,財政援助制限法3条による規制を潜脱するものというほかないから,同条に違反した無効なものであるとした事例 
2 
市が,株式会社が第三セクター方式で設立されるに際して都市銀行及び信用金庫との間で前記各金融機関の株式会社に対する融資について締結した損失補償協定に基づいてした損失補償金の支出が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長に対してされた,市長個人に損害賠償をすることを求める請求につき,前記協定は,法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(以下「財政援助制限法」という。)に違反した無効なものであって,前記損失補償金の支出命令及びその支出は無効な支出負担行為に基づいてされた違法なものであるが,前記支出命令が発せられた平成17年1月当時においては,損失補償契約を締結することは財政援助制限法3条に反しない旨の自治省行政課長の回答を前提として,そのような理解が広く受け入れられており,地方公共団体において前記協定のような損失補償契約は広く利用されていたし,裁判例としてもこれを適法とするものがあったことからすると,市長が前記協定を有効なものと考え,これを前提とする支出命令を発したとしても,その責めに帰すことのできない,やむを得ない事情があったものと認められ,その点に故意,過失があったとも認められないとして,前記請求を棄却した事例

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