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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行コ)6

事件名

 損害賠償等請求控訴事件(原審・岡山地方裁判所平成8年(行ウ)第23号)

裁判年月日

 平成18年6月22日

裁判所名

 広島高等裁判所  岡山支部

分野

 行政

判示事項

 1 県が公園用地として賃借し,公園事業を推進するため設立された第三セクター方式による株式会社に対して転貸等している土地が,地方自治法244条1項の「公の施設」に当たらないとされた事例 2 県が公園用地として賃借している土地の賃借権が,普通財産に当たるとされた事例 3 県が,公園事業を推進するため設立された第三セクター方式による株式会社に対し,公園用地として賃借した土地の一部を転貸し,残部等を無償で貸し付けることが,地方自治法232条の2に違反しないとされた事例

裁判要旨

 1 県が公園用地として賃借して公園事業を推進するため設立された第三セクター方式による株式会社に対して転貸している土地につき,当該公園は,県の観光の振興を図る等の経済的効果を目的として建設された観光拠点としての性格が強いものであって,前記公園事業は,住民の利用に供し,住民の福祉を増進する目的を持っていることを否定できないものの,道路,公園,公民館のような多数の住民に対して均等な役務を提供することを目的とし,その公正な管理を確保する必要がある「公の施設」とは認め難いとして,地方自治法244条1項の「公の施設」に当たらないとした事例 2 県が公園用地として賃借している土地の賃借権につき,同賃借権は,建物所有目的,期間50年間の定期借地権であり,物権に準じた経済的価値を有し,現実に公有財産として管理する必要があって,あえて地上権等と区別して取り扱うべき現実的根拠に乏しいから,地方自治法(平成13年法律第75号による改正前)238条1項4号の「地上権」等に準じ,同項にいう公有財産と解され,当該公園事業は,住民の利用に供し,住民の福祉を増進する目的を持っていることを否定できないものの,県の観光の振興を図る等の経済的効果を目的として建設された観光拠点としての性格が強いという前記公園事業の運営形態や目的等に照らすと,前記賃借権は,県が「公用」に供する財産にも「公共の用」に供する財産にも該当するものとはいえず,しかも,これらに供する旨の決定もないとして,普通財産に当たるとした事例 3 県が,公園事業を推進するため設立された第三セクター方式による株式会社に対し,公園用地として賃借した土地の一部を転貸し,残部等を無償で貸し付けることにつき,このような方法は,適正な対価による転貸と,議会の議決を経た無償貸付に分けられるところ,地方自治法232条の2にいう「寄附又は補助」とは,いずれも地方公共団体が反対給付を求めずに公益上の必要性に基づいて一方的に行う財政的援助を意味するから,前記無償貸付は,同条にいう「寄附又は補助」に含まれるものと解されるが,県は財政上の余裕に乏しく,当該公園が大型レジャー施設の色彩を有していること,地方公共団体又はその住民の利益に対する効用度が明確ではない等の面はあるとしても,未だ当該公園は,公益的な側面を有する施設として運営されている上,県民及び県外の観光客を対象とした観光資源としての意味を失っておらず,全国的に知名度のある施設として県のイメージ向上に一定の効果を有しているといえること,さらに公設民営による運営の政策決定をするに至った経緯,議会の審議,選挙等による民意等にかんがみると,県知事において,公益上の必要性を判断するに当たり,その裁量権の濫用ないし逸脱があるとまではいえないとして,地方自治法232条の2に違反しないとした事例

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