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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行コ)97

事件名

 法人文書部分開示決定処分取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成16年(行ウ)第138号)

裁判年月日

 平成18年6月21日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し学生定員・現員調査票に記載された私立大学の入学者数及び定員充足率の各情報が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報(利益侵害情報)に該当するとされた事例 
2 日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し学生定員・現員調査票に記載された私立大学の学生現員の情報が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報(利益侵害情報)に該当しないとされた事例 
3 日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し留年者調査票に記載された私立大学の1年留年者の情報が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報(利益侵害情報)に該当するとされた事例 
4 日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し学生定員・現員調査票に記載された学生現員,入学者数及び定員充足率,留年者調査票に記載された1年留年者並びに学生に係る補助金配分額計算表に記載された現員,対象学生数及び経常的経費の各情報が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律5条4号所定の不開示情報(事務支障情報)に該当するとされた事例 
5 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律4条1項に基づいてされた日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し学生定員・現員調査票(編入学)の開示請求に対する部分開示決定が行政手続法8条所定の理由の付記を欠き違法であるとされた事例

裁判要旨

 1 日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し学生定員・現員調査票に記載された私立大学の入学者数及び定員充足率の各情報につき,前記各情報は,学校法人の経営状態や収入に直結する法人内部の情報であり,また,定員充足率の情報は,定員充足率が低い大学が経済的に危ない大学と短絡的に即断され,学生募集等に不当な影響を与えるおそれがある情報であるから,公表されることにより,学校法人等の競争上の地位その他正当な利益を害する蓋然性が高いものと認められるとして,前記各情報は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報(利益侵害情報)に該当するとした事例 
2 日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し学生定員・現員調査票に記載された私立大学の学生現員の情報につき,同情報は,学校法人の経営状態や収入に直結する法人内部の情報であるが,当該大学が,各学部学科ごとの学生数をインターネット上で公開していることなどからすると,学生現員の情報を開示しても,同大学の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがないとして,前記情報は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報(利益侵害情報)に該当しないとした事例 
3 日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し留年者調査票に記載された私立大学の1年留年者の情報につき,留年者数の多少は,本来,大学のレベルや学生の質を直ちに反映するものではないが,実際には,留年者の多い大学が,質の良くない学生の多い大学あるいは卒業の難しい大学等と短絡的に即断され,その公表が,当該大学の学生募集に影響を与える可能性は十分にあるから,公にすることにより,学校法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとして,前記情報は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報(利益侵害情報)に該当するとした事例 
4 日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し学生定員・現員調査票に記載された学生現員,入学者数及び定員充足率,留年者調査票に記載された1年留年者並びに学生に係る補助金配分額計算表に記載された現員,対象学生数及び経常的経費の各情報につき,前記各情報が開示されると,学生現員数等の情報公開に消極的な学校法人の中には,今後,自校の同種情報が開示されるリスクを嫌い,調査への協力にちゅうちょし,前記調査に応じないものが増える蓋然性が高く,調査への提出率が下がれば,これまで蓄積されてきた前記調査に係るデータの継続性は損なわれ,入学志願動向速報等の前記調査の成果物の信頼性が失われることにもなるから,公開することにより前記事業団の業務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして,前記各情報は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律5条4号所定の不開示情報(事務支障情報)に該当するとした事例 
5 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律4条1項に基づいてされた日本私立学校振興・共済事業団がすべての私立学校を対象として実施している学校法人基礎調査の結果に基づいて作成し学生定員・現員調査票(編入学)(以下「編入学調査票」という。)につき,同決定は,不開示とする部分とその理由を開示決定通知書本文と同通知書に添付された別紙とによって明らかにしており,同通知書本文のみでは不開示部分の特定もその理由も明らかにされていないところ,同理由説明には編入学調査票に関する記載は全くないのであるから,開示に当たって編入学調査票が添付され,不開示部分を特定して開示されたからといって,編入学調査票の不開示部分について,不開示の理由が付記されたとはいえないとして,前記部分開示決定は,行政手続法8条所定の理由の付記を欠き違法であるとした事例

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