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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成14(行コ)5

事件名

 六ヶ所ウラン濃縮工場の核燃料物質加工事業許可処分無効確認・取消請求控訴事件(原審・青森地方裁判所平成元年(行ウ)第7号)

裁判年月日

 平成18年5月9日

裁判所名

 仙台高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 ウラン濃縮工場建設のため,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和63年法律第69号による改正前)13条,14条に基づき内閣総理大臣がした核燃料物質の加工事業許可処分の無効確認及び取消しを求める訴えにつき,前記工場から20キロメートル前後の範囲内に居住する住民は,原告適格を有するとされた事例

2 ウラン濃縮工場建設のため,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和63年法律第69号による改正前)13条,14条に基づき内閣総理大臣がした核燃料物質の加工事業許可処分の無効確認請求が,棄却された事例 
3 ウラン濃縮工場建設のため,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和63年法律第69号による改正前)13条,14条に基づき内閣総理大臣がした核燃料物質の加工事業許可処分の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1  ウラン濃縮工場(以下,「本件施設」という。)建設のため,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和63年法律第69号による改正前)13条,14条に基づき内閣総理大臣がした核燃料物質の加工事業許可処分の無効確認及び取消しを求める訴えにつき,同法14条1項2号のうち技術的能力に係る部分の規定及び3号の規定は,単に公衆の生命,身体の安全,環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず,加工施設の事故がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当であるから,本件施設について想定される事故によって直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民は前記各訴えにつき原告適格を有するとした上,本件施設の種類,構造,規模等の本件施設に関する具体的な諸条件を考慮に入れた上で,住民らの居住する地域と本件施設の位置との距離関係を中心として社会通念に照らし合理的に判断すると,前記被害を受けることが想定されるのは,最大でも本件施設から20キロメートル前後の範囲内に居住する住民に限られるものというべきであるとして,前記範囲内に居住する住民は,前記各訴えにつき原告適格を有するとした事例 
2  ウラン濃縮工場(以下、「本件施設」という。)建設のため,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和63年法律第69号による改正前)13条,14条に基づき内閣総理大臣がした核燃料物質の加工事業許可処分の無効確認請求につき,本件施設で行われるウラン濃縮は,核燃料物質である六フッ化ウランを,原子炉である軽水炉で燃料として使用できるウラン235の高い組成の濃縮ウランとするために,遠心分離法という物理的方法により処理するものということができ,文理解釈上,同法2条6項及び13条1項にいう「加工」に該当するものというべきであるから,前記許可処分が法律上の根拠を欠く無効な処分であるということはできず,同処分に重大かつ明白な瑕疵があるとはいえないとして,前記請求を棄却した事例 
3 ウラン濃縮工場建設のため,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和63年法律第69号による改正前)13条,14条に基づき内閣総理大臣がした核燃料物質の加工事業許可処分の取消請求につき,同請求に係る主張,立証責任については,行政庁の側において,まず,その依拠した具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等,行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠,資料に基づき主張,立証する必要があり,行政庁が前記主張,立証を尽くさない場合には,行政庁がした前記判断に不合理な点があることが事実上推認されると解されるが,原子力安全委員会の安全審査に先立つ行政庁審査の調査審議の過程に関する資料が提出されていないからといって,そのことから,直ちに前記許可処分の判断及び調査審議の過程に看過し難い過誤,欠落があると推認される関係にはないというべきであり,また,内閣総理大臣及び原子力安全委員会が前記許可の申請についてした審査において看過し難い過誤,欠落があったとすることはできないなどとして,同項2号のうち技術的能力に係る部分及び同項3号への適合性を認めて前記許可処分をすることとした内閣総理大臣の判断に不合理な点はないとして,前記請求を棄却した事例

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