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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行コ)68

事件名

 損害賠償請求控訴事件(原審・甲府地方裁判所平成12年(行ウ)第2号)

裁判年月日

 平成18年7月20日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 当時の町長が直接的又は間接的に漏えいした予定価格を基にして行われた入札者間の談合の結果,町が,不当に高額な請負代金によって公共工事の請負契約を締結し,損害を被ったにもかかわらず,町が同人に対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとしてされた住民監査請求につき,監査請求の期間制限を定めた地方自治法242条2項の適用はないとされた事例 
2 町が締結した公共工事の請負契約は,当時の町長が直接的又は間接的に漏えいした予定価格を基にして行われた入札者間の談合の結果,不当に高額な請負代金によって締結されたものであり,町は,談合がなければ自由競争によって形成されたであろう請負代金額と実際の請負代金額との差額相当額の損害を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づいて,町に代位して,当時の町長個人に対してされた損害賠償請求について,その訴訟係属中に町議会が前記損害賠償請求権を放棄する旨の議決を行ったことにより前記損害賠償請求権は消滅したとして,前記請求が棄却された事例

裁判要旨

 1 当時の町長が直接的又は間接的に漏えいした予定価格を基にして行われた入札者間の談合の結果,町が,不当に高額な請負代金によって公共工事の請負契約を締結し,損害を被ったにもかかわらず,町が同人に対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとしてされた住民監査請求につき,前記監査請求の対象事項は,町が当時の町長に対して有する損害賠償請求権の行使を怠る事実とされているところ,前記監査請求に係る監査を遂げるためには,監査委員は,同人による入札予定価格漏えい及び入札予定工事業者間の談合,これに基づく工事業者の入札及び町との契約締結が認められ,それが不法行為法上違法の評価を受けるものであるかどうか,これにより町に損害が発生したといえるかどうかなどを確定しさえすれば足り,町の同人に対する損害賠償請求権は,前記契約が違法,無効であるからこそ発生するというものではなく,また,同人による予定価格漏えい行為は,財務会計職員の財務会計上の行為の準備行為とみるべきものでもないし,前記契約の違法を構成する関係にもないとして,前記監査請求には地方自治法242条2項の規定の適用はないとした事例 
2 町が締結した公共工事の請負契約は,当時の町長が直接的又は間接的に漏えいした予定価格を基にして行われた入札者間の談合の結果,不当に高額な請負代金によって締結されたものであり,町は,談合がなければ自由競争によって形成されたであろう請負代金額と実際の請負代金額との差額相当額の損害を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づいて,町に代位して,当時の町長個人に対してされた損害賠償請求について,その訴訟係属中に町議会が前記損害賠償請求権を放棄する議決を行った場合,地方自治法96条1項10号は,議会の議決事項として,「法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか,権利を放棄すること。」と規定し,地方公共団体の権利の放棄については,執行機関である地方公共団体の長ではなく,議会の議決によるべきものとしているから,議会は,法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合でない限り,自らが本来有する権限に基づき,権利放棄の議決をすることができるところ,前記損害賠償請求権の放棄については,法令又は条例に何ら特別の定めはないと認められるから,町議会が行った議決は,町議会が自らが本来有する権限に基づき行ったものであって有効であり,仮に,当時の町長が入札予定価格を漏えいして業者間で談合を行い,これによって町が当時の町長に対して損害賠償請求権を取得したとしても,前記損害賠償請求権は前記議決により消滅したものであるとして,前記請求を棄却した事例

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