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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)106

事件名

 文書非開示処分取消請求事件

裁判年月日

 平成18年7月28日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,非管理職職員の氏名が,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条2号に非開示情報として規定する個人識別情報に該当しないとされた事例 2 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,非管理職職員の印影が,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条2号に非開示情報として規定する個人識別情報に該当しないとされた事例 3 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,取扱者出納簿,取扱者証拠書類,中間者出納簿,中間者証拠書類,取扱者領収書及び中間者領収書に記載された非管理職職員である警察職員の氏名及び印影に含まれる情報が,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条4号に非開示情報として規定する秩序維持情報に該当するとされた事例 4 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,領収書に貼られた印紙の割り印としての印影につき,法人職員のものは東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条2号に非開示情報として規定する個人識別情報に該当するが,法人又は法人代表者のものはいずれもこれに該当しないとされた事例 5 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,領収書に押捺された法人又は法人代表者若しくはその職員の印影に含まれる情報が,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条3号に非開示情報として規定する法人等情報に該当しないとされた事例 6 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,領収書に押捺された法人又は法人代表者若しくはその職員の印影に含まれる情報が,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条4号に非開示情報として規定する秩序維持情報に該当しないとされた事例 7 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,法人の発行した領収書に記載された当該法人の職員個人に付与された番号の情報が,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条2号に非開示情報として規定する個人識別情報に該当するとされた事例

裁判要旨

 1 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,非管理職職員の氏名が東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条2号の非開示情報(個人識別情報)に該当するかにつき,前記各情報は,個人にかかわりのある情報であって,特定の個人が識別され得るものであるから,前記条例7条2号本文所定の「個人に関する情報」に当たるが,同条例7条2号ただし書ハは,個人に関する情報のうち,当該個人が公務員である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分を開示すべきものとしており,同条例が,都が都政に関し都民に説明する責務を全うするようにし,都民の理解と批判の下に公正で透明な行政を推進し,都民による都政への参加を進めるのに資することを目的とし,そのために公文書の開示を請求する都民の権利を明らかにして,都政に関する情報を広く都民に公開することを趣旨とするものであることからすれば,都の公務員の職務の遂行に関する情報が記録された公文書については,当該情報に公務員個人の私事に関する情報が含まれる場合を除き,同条例が当該公務員の氏名を非公開とすることができるものとしているとは解し難いとした上,取扱者支出伺,取扱者支払精算書,中間者支出伺,支払報告書,中間者支払精算書,立替払報告書,取扱者出納簿,取扱者領収書及び中間者領収書に記録された前記氏名に含まれる情報は,都の公務員がその職務として作成し,又は第三者が都の公務員の職務の執行に当たって作成した上記各文書において,捜査費を執行した者,捜査費の精算をする者,引継ぎに伴う検査を行った者及び捜査費の立替払をした者等を明らかにする趣旨で,上記各文書に記録された情報であると解されるところ,これが都の公務員個人の私事に関する情報を含むものでないことは明らかであるから,同号ただし書ハ所定の情報に当たるとして,前記条例7条2号に非開示情報として規定する個人識別情報に該当しないとした事例 2 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,非管理職職員の印影が東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条2号の非開示情報(個人識別情報)に該当するかにつき,前記印影は,個人に関する情報で,特定の個人を識別することができるものであるから,前記条例7条2号本文所定の「個人に関する情報」に当たるが,前記公文書に記録された印影は,都の公務員がその職務として作成した公文書について,その作成者等を明らかにする趣旨で記録された情報であると解され,これが当該公務員個人の私事に関する情報を含むものでないことは,明らかであり,都の公務員の職務の遂行に関する情報であるから,前記条例7条2号ただし書ハ所定の情報に当たるとして,前記条例7条2号に非開示情報として規定する個人識別情報に該当しないとした事例 3 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,取扱者出納簿,取扱者証拠書類,中間者出納簿,中間者証拠書類,取扱者領収書及び中間者領収書に記載された非管理職職員である警察職員の氏名及び印影に含まれる情報につき,警察職員の配置を含む警察業務に関する情報は,一般市民にとってささいな情報であっても,犯罪の実行や仕返しをもくろむ個人や組織にとっては貴重な情報となることがあり,犯罪捜査や警察規制を業務とする警察は,そのような情報が犯罪組織等に入手されることを防止する必要があるとした上,前記情報を公にすることにより,当該非管理職職員である警察職員及びその家族の生命若しくは身体又はその地位若しくは正常な生活への不法な侵害等を誘発し,それによって犯罪の予防及び捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるとして,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条4号に非開示情報として規定する秩序維持情報に該当するとした事例 4 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,領収書に貼られた印紙の割り印としての印影につき,法人職員のものは特定の個人を識別することができるものであり,同号ただし書イに規定する「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている」とは認められないから,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条2号に非開示情報として規定する個人識別情報に該当するが,法人のものは個人に関する情報ではなく,法人代表者のものは同条3号が個人に関する情報とは異なる類型の情報として非開示事由を規定していることに照らし,いずれもこれに該当しないとした事例 5 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,領収書に押捺された法人又は法人代表者若しくはその職員の印影に含まれる情報につき,そのうちの法人の職員の印影に当たるものに含まれる情報は,法人に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報に当たらず,また,そのうちの法人又はその代表者の印影に当たるものは,いずれも領収証を発行した法人の銀行印の印影ではないものと認められるから,これを開示しても,当該法人の競争上又は事業運営上の地位,社会的信用その他正当な利益が損なわれると認めることはできないとして,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条3号に非開示情報として規定する法人等情報に該当しないとした事例 6 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,領収書に押捺された法人又は法人代表者若しくはその職員の印影に含まれる情報につき,そのうちの法人又はその代表者の印影に当たるものは,いずれも領収証を発行した法人の銀行印の印影ではないものと認められ,また,そのうちの法人の職員の印影に当たるものに含まれる情報は,当該職員の実印の印影ではないと認められるから,これを公にすることによって,偽造等の犯罪行為を容易にし,犯罪の予防等に支障を及ぼすおそれがあるものと判断したことに,相当の理由があるということはできないとして,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条4号に非開示情報として規定する秩序維持情報に該当しないとした事例 7 警視庁本部少年事件課及び交通捜査課の捜査報償費(都費)の支出に関する財務会計帳票及び支出証拠書類に記録された情報のうち,法人の発行した領収書に記載された当該法人の職員個人に付与された番号の情報につき,東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)7条2号本文にいう「他の情報」とは,既に公知となっている情報や当該個人に関する情報を容易に取得することができる情報に限られるものではないが,当該個人しか知り得ない情報やごく限られた範囲の者しか知り得ない情報は含まれないとした上,前記情報は,同法人の内部において調製されているものと考えられる職員録等と照合すれば,同番号に係る職員を特定することは可能であると考えられるから,個人に関する情報で,特定の個人を識別することができるものであるとして,同号に非開示情報として規定する個人識別情報に該当するとした事例

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