裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成17(行ウ)588
- 事件名
行政文書不開示決定取消請求事件
- 裁判年月日
平成18年9月1日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 司法試験第2次試験の口述試験の準備作業の一環として考査委員により作成された想定問答等の文書が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条2項にいう「行政文書」に該当するとされた事例 2 司法試験第2次試験の口述試験の準備作業の一環として考査委員により作成された想定問答等の文書に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条6号柱書きの不開示情報に該当するとされた事例
- 裁判要旨
1 司法試験第2次試験の口述試験の準備作業の一環として考査委員により作成された想定問答等の文書が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)2条2項にいう「行政文書」に該当するか否かにつき,同項柱書きの「組織的に用いる」とは,その作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく,組織としての共用文書の実質を備えた状態,すなわち,当該行政機関の組織において,業務上必要なものとして,利用され,又は保存されている状態のものを意味すると解するのが相当であり,これについては,文書の作成又は取得の状況,利用の状況,保存又は廃棄の状況などを総合的に考慮して実質的な判断を行うのが相当であるとした上で,前記文書の作成,利用及び保存等の状況に照らすと,同文書は,その作成者である1人の考査委員が専ら自らの便宜のために作成したものと認めるのは相当でなく,当初から他の考査委員に配付されることを予定して作成された文書と見るべきであり,また,口述試験の実施の準備に際しての参考資料として利用することを前提に,作成者以外の他の考査委員に配付されたものであって,配付を受けた他の考査委員の多くも,これを参考資料として利用して,自らが口述試験の際に使用するための手控えとなる想定問答等を作成していることが認められることから,前記文書は「組織的に用いる」文書と認めるべきであるとして,情報公開法2条2項にいう「行政文書」に該当するとした事例 2 司法試験第2次試験の口述試験の準備作業の一環として考査委員により作成された想定問答等の文書に記載された情報につき,口述試験は,司法試験第2次試験の中でも唯一双方向性を有する試験であり,多様な発問と,受験者の応答によってさらに発問が発展する点に特色があるところ,試験終了後,試験における考査委員と受験者との問答が再現され,受験情報誌等に掲載され,批評又は分析の対象とされている現状があり,前記文書が開示されると,口述試験の出題に関する事項が部分的に明らかになった上,司法試験予備校関係者や受験生に対し,短時間のうちに広く知れ渡ることが十分に予想され,そのような事態となった場合には,開示された前記文書の表面的な文言にとらわれ,考査委員の発問の真意,問答の文脈等の要素を考慮することなく,同文書があたかも唯一の正解であったかのように誤解し,同文書をうのみにして無批判に勉学の指針とするなどの風潮が受験者の間に一層広がり,既に筆記試験において問題化している模範解答例丸暗記型学習への依存や,これによる画一的な,又はマニュアル的な回答の頻出といった悪しき現状に拍車がかかるばかりか,さらには,考査委員による発問の流れや組合せのパターン等が分析されることにより,多様な質問とその組合せをもって受験者本来の理解力や思考力等を測ろうとする発問者の意図を少なからず阻害するおそれがあるといわざるを得ないことから,司法試験の実施という事務の性質上,前記文書を開示すると,司法試験の実施事務の適正な遂行に支障を及ぼす影響があることが認められるとして,同文書に記載された情報は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条6号柱書きの不開示情報に該当するとした事例
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