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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)323等

事件名

 建築確認処分取消請求事件

裁判年月日

 平成18年9月29日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 近隣住民の提起した,建築基準法6条の2第1項に基づく確認の処分の取消しを求める訴えにつき,建築確認に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者,建築確認に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物の居住者及び風害を受ける地域内の居住者は,当該建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,前記訴えにおける原告適格を有するとされた事例 2 第三者の建築物に係る建築確認処分に対して審査請求をし,同審査請求を棄却する旨の裁決を受けた者が,同裁決と前後して,複数回受けた前記確認処分に係る計画の一部を変更した計画に係る確認処分につき審査請求を経ずに提起した,前記当初の確認処分及び同変更計画に係る各確認処分の取消しを求める訴えが,行政事件訴訟法8条2項3号所定の正当な理由があるとして,適法とされた事例

裁判要旨

 1 近隣住民の提起した,建築基準法6条の2第1項に基づく確認の処分の取消しを求める訴えにつき,同項は,当該建築物並びにその居住者の生命,身体の安全及び健康の保護を図り,当該建築物及びその周辺の建築物における日照,通風,採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに,地震,火災等により当該建築物が倒壊し,又は炎上するなど万一の事態が生じた場合に,その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことのないようにするものであると解されるとした上,以上のような同項の趣旨及び目的,同項が同法6条1項各号に掲げる建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることの確認において保護しようとしている利益の内容,性質等のほか,同法が建築物の敷地,構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命,健康及び財産の保護を図ることなどを目的としていること(同法1条)をも考慮すると,同法6条の2第1項は,同項による確認に係る建築物並びにその居住者の生命又は身体の安全及び健康を保護し,その建築等が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに,当該建築物の倒壊,炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物の居住者の生命又は身体の安全等及び財産としてのその建築物,当該建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の健康並びに当該建築物により通風を阻害されるなど風害を受ける周辺の他の建築物に居住する者の風害を被らない利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきであるから,建築確認に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し,又はこれを所有する者,建築確認に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物の居住者及び建築確認に係る建築物により風害を受ける地域内の居住者は,当該建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,前記訴えにおける原告適格を有するとした事例 2 第三者の建築物に係る建築確認処分に対して審査請求をし,同審査請求を棄却する旨の裁決を受けた者が,同裁決と前後して,複数回受けた前記確認処分に係る計画の一部を変更した計画に係る確認処分につき審査請求を経ずに提起した,前記当初の確認処分及び同変更計画に係る各確認処分の取消しを求める訴えにつき,建築物の計画の変更の確認は,変更しなかった部分と変更した部分とを併せて建築基準関係規定の適合性を判断し,変更しなかった部分については従前の建築物の計画の確認のとおりであること及び変更した部分については建築基準関係規定に適合していることの確認をする性質を有するものであり,変更前の計画とは別個の処分であると解するのが相当であるから,建築物の計画の変更の確認の取消しを求める訴えは,原則として,当該建築物の計画の変更の確認につき建築審査会の裁決を経た後でなければ提起することはできないというべきであるが,2個の処分が極めて密接な関連性を有しており,2個の処分を通じて処分の理由が共通であり,不服申立てにおいて攻撃する点も専ら共通の処分理由に対するものであって,これに対する行政庁の基本的な判断が一方の処分に対する不服申立てにおいて既に示されていて変更の余地がない場合には,他方の処分については,裁決を経ないで取消しの訴えを提起することにつき,行政事件訴訟法8条2項3号所定の「正当な理由」があると解するのが相当であるとした上,前記審査請求における主張はいずれも排斥されていること,前記各変更確認処分についての違法事由に係る主張は,当初の建築確認処分についての主張と異なるものではないことが認められるから,当初の建築確認処分と前記各変更確認処分とは,極めて密接な関連性を有しており,不服申立てにおいて攻撃する点も専ら共通の処分理由に対するものであって,これに対する建築審査会の基本的な判断が既に示されていて変更の余地はないというべきであるから,前記各変更確認処分につき建築審査会に対する審査請求を経ずに取消しの訴えを提起したことについては,同号所定の「正当な理由」があると認めるのが相当であるとして,前記訴えを適法とした事例

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