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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成14(行ウ)52

事件名

 産業廃棄物処分業変更許可処分取消請求事件

裁判年月日

 平成19年2月7日

裁判所名

 さいたま地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前)14条の2第1項に基づく産業廃棄物処分業変更許可処分の取消しを求める訴えにおいて,処分業者が設置した処分場施設の中心部から3キロメートルの範囲内の場所に居住ないし勤務する者らの原告適格が,肯定された事例 
2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前)14条の2第1項に基づいてされた産業廃棄物処分業変更許可処分に対し,周辺住民が同処分の取消しを求める訴えを提起した後,新たな産業廃棄物処分業更新許可がされた場合につき,前記訴えに係る訴えの利益は失われないとされた事例 
3 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前)14条の2第1項に基づく産業廃棄物処分業変更許可処分の取消請求が,一部認容された事例 
4 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前)14条の2第1項に基づく産業廃棄物処分業変更許可処分の取消しの訴えにおいて,当該変更に係る施設以外の廃棄物処理施設に係る事由は同処分の違法事由とならないとされた事例

裁判要旨

 1 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前)14条の2第1項に基づく産業廃棄物処分業変更許可処分の取消しを求める訴えにおける原告適格につき,同法は,産業廃棄物の飛散や流出によって,産業廃棄物に含まれる有害物質を原因とする周辺住民の健康被害や生活環境との悪化を防止し,周辺住民の生命,身体の安全や生活環境の保全をも保護する趣旨を有するものと解すべきであって,違法な産業廃棄物処分業許可がされた場合に当該許可にかかる産業廃棄物処分によって生じる周辺住民の生命,身体や生活環境に関する被害の内容,性質,程度等に照らせば,これらは一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものといわざるを得ないとした上で,前記変更許可処分を申請した処分業者がかつて焼却炉設置を計画した際に実施した大気汚染物質についての生活環境影響調査において調査区域が事業所周辺約3キロメートルとされ,その後,前記処分業者の事業所周辺の粉じん飛散状況を把握するために行われた周辺粉じん濃度分布及び成分調査でも調査地点はおおむね周囲3キロメートルの数地点が選ばれていること及び社会通念に照らすと,前記業者の処分場施設の中心部から3キロメートルの範囲内の場所に居住ないし勤務する者については,前記変更許可に基づく産業廃棄物処理に際し発生する粉じんの飛散等に伴う健康被害を受けるおそれがある者として,前記訴えにおいて原告適格を有するとした事例 
2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前)14条の2第1項に基づいてされた産業廃棄物処分業変更許可処分に対し,周辺住民が同処分の取消しを求める訴えを提起した後,新たな産業廃棄物処分業更新許可がされた場合につき,同法が,産業廃棄物処理業の許可につき更新制を採用したのは,産業廃棄物処分業者の資質の向上と信頼性の確保を図るためであって,更新許可は,飽くまで,従前に許可を受けて産業廃棄物の処分を業として行っていた者に対し,更新期限の到来を契機として,許可要件の再審査を行い,要件を満たしている場合には従前にされた新規許可の効力を引き続き継続させるものであって,この理は,新規許可がされた後,更新許可や変更許可が複数回された場合においても同様であり,最終的にされた更新許可は,更新許可の直前にされていた許可の内容,すなわちこれまでにされた新規許可,更新許可及び変更許可を総合した内容の許可の効力を継続させる性質,効果を有するものと解されるとした上で,前記変更許可処分を申請した処分業者は,全く新規に許可を受けたわけではなく,過去の許可を前提にした更新許可により産業廃棄物処分業を継続しているものであるから,前記変更許可処分の後に新たな産業廃棄物処分業更新許可がされた場合であっても,前記訴えに係る訴えの利益は失われないとした事例 
3 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前)14条の2第1項に基づく産業廃棄物処分業変更許可処分の取消請求につき,前記変更許可処分に係る処分場施設に設けられた廃プラスチック類の破砕,減容施設について,一つの施設において,破砕のほか,溶融,減容等複数のプロセスをたどって産業廃棄物を処理する施設が,同法施行令7条において同法15条に基づく産業廃棄物処理施設設置許可を要するものとされる「廃プラスチック類の破砕施設」に当たると解すべきか,同許可を要するものとされていない廃プラスチック類の溶融施設や減容施設に当たると解すべきかについては,当該施設における破砕工程とその他の工程の位置にかんがみ決すべきであるところ,前記破砕,減容施設は,破砕,圧縮による産業廃棄物の減容を図る施設であって,単に破砕が溶融,減容のための前処理とまではいえないから,同施設は,全体として「廃プラスチック類の破砕施設」に該当すると解するのが相当であり,かつ,同施設の処理能力は1日当たり5トンを超えるものとなるから,同施設は設置に許可が必要となる産業廃棄物処理施設に該当するとした上,設置について法律所定の許可を受けていない産業廃棄物処理施設を「その事業の用に供する施設」としてされた産業廃棄物処分業許可は,同法(前記改正前)14条の2第2項,14条6項1号,同法施行規則10条の5第1号イの要件を欠いた違法なものであるところ,これを見逃してされた前記変更許可処分は違法であるから,前記変更許可処分については,事業範囲中間処分業のうち,瑕疵事由のある「破砕・減容:廃プラスチック類,紙くず,繊維くず 以上3種類」の限度で取り消すのが相当であるとして,前記請求を一部認容した事例 
4 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前)14条の2第1項に基づく産業廃棄物処分業変更許可処分の取消しの訴えにつき,同法及びその関係法令上,許可権者は,産業廃棄物処分業の変更許可をするに当たり,変更前の産業廃棄物処分業許可に係る事業の用に供する施設のすべてについて,再度,法令に定められた基準に適合するか否かを審査することを要求されているものとはいえず,変更に係る事業の用に供する施設についてのみ審査すれば足りるとした上で,前記変更許可申請は,当該変更に係る施設以外の廃棄物処理施設については何ら変更を求めるものではないので,これらの施設が産業廃棄物処理施設設置許可を受けていない,あるいは,当該施設に関する審査を脱漏しているなどの違法事由は,いずれも前記変更許可処分の違法事由とならないとされた事例

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