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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成15(行ウ)320等

事件名

 原爆症認定申請却下処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成19年3月22日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の各申請に対し,厚生労働大臣がした同申請を却下する旨の各処分は,各申請者の疾病の放射線起因性についての判断を誤り違法であるなどとしてした前記各処分の各取消請求が,いずれも認容された事例

裁判要旨

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の各申請に対し,厚生労働大臣がした同申請を却下する旨の各処分は,各申請者の疾病の放射線起因性についての判断を誤り違法であるなどとしてされた前記各処分の各取消請求につき,放射性起因性の有無は,病理学,臨床医学,放射線学や,疾病等に関する科学的知見を総合的に考慮した上で,判断するほかはなく,最終的には,合理的な通常人が,当該疾病の原因は放射線であると判断するに足りる根拠が存在するかどうかという観点から判断をするほかはないところ,DS86(日米の放射線学の第一人者が開発した広島及び長崎における原爆放射線の線量評価システム)の線量評価は,特に遠距離被爆者や入市被爆者(原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に一定の区域内に在った者)の被爆線量を過小評価するなどのおそれがあり,原因確率についてもリスクを過小評価するなどのおそれがあり得るものであって,これらの形式的な適用のみによって放射線起因性を否定するのは相当ではなく,当該被爆者の被爆状況,被爆後の行動,急性症状の有無,態様,程度等を慎重に検討した上で,DS86による推定値を上回る被爆を受けた可能性がないかどうかを判断し,更に,当該被爆者のその後の生活状況,病歴,疾病の具体的な状況やその発生に至る経緯等から,放射線の関与がなければ通常は考えられないような症状の推移がないかどうかを判断し,これらを総合的に考慮した上で,合理的な通常人の立場において,当該疾病は,放射線に起因するものであると判断し得る程度の心証に達した場合には,放射線起因性を肯定すべきであるとした上,前記各申請者の各申請に係る疾病である胃がん,腎臓がん,前立腺がん,肝細胞がん,直腸がん,卵巣腫瘍,原発性肝がん,食道がん,右下咽頭がん,肝硬変,頸部有痛性瘢痕,甲状腺機能低下症,肝硬変症,肝腫瘍,悪性黒色腫,肺がん,子宮体部がん,甲状腺濾胞がん等については放射線起因性及び要医療性の要件を具備していることから,前記各処分は違法であるとして,前記各請求をいずれも認容した事例

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