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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成15(行ウ)6

事件名

 公有水面埋立免許処分取消請求事件

裁判年月日

 平成19年3月26日

裁判所名

 大分地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 港湾管理者である県がした公有水面の埋立免許処分の取消しを求める訴えにつき,埋立予定区域において,「磯草の権利」という慣習上の漁業権を有すると主張する者及び同人らによって構成される地域団体の原告適格を否定した事例
2 港湾管理者である県がした公有水面の埋立免許処分の取消しを求める訴えにつき,埋立予定区域において,埋立予定区域の周辺に居住する者の原告適格が否定された事例

裁判要旨

 1 港湾管理者である県がした公有水面の埋立免許処分の取消しを求める訴えにつき,現行の漁業法の下では,慣習法上の漁業権は存続,成立する余地がないから,「磯草の権利」という慣習法上の漁業権を有すると主張する者及び同人らによって構成される地域団体は,公有水面埋立法5条2号の漁業権者には当たらないものの,現行の漁業法下においても,共同漁業については,漁業権に基づかない漁業を営むことも認められており(漁業法9条参照),同法14条11項によれば,第一種又は第五種共同漁業権の内容たる漁業を,漁業協同組合の非組合員が,漁業協同組合の容認や海区漁業調整委員会の指示の下で操業することは一応正当な操業であるとされているから,これが社会通念上権利と認められる程度にまで成熟した場合には,慣習上の利益として法的保護に値する場合もあり得るところ,埋立予定区域で操業する慣習上の利益は,埋立免許処分により必然的に侵害される関係にあるから,前記処分の取消を求める「法律上の利益」に当たると解するのが相当であるとした上,前記の者らが主張する「磯草の権利」は,長期間にわたる慣習として部落民の間に根付いているものの,慣習上の利益として保護すべき程度の内容を備えているとはいえないとして,前記の者らの原告適格を否定した事例
2 港湾管理者である県がした公有水面の埋立免許処分の取消しを求める訴えにつき,埋立免許に関する公有水面埋立法の趣旨及び目的,埋立免許制度を通じて保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば,同法は,わが国の健全な経済発展と国民の健康で文化的な生活を確保するという公益的見地から埋立事業を規制するとともに,その周辺地域で生活し日常的に埋立予定区域や水質や底質の悪化する周辺水面に接する者であって,埋立工事による汚濁流出等に伴う水質や底質の悪化等により,健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に対して,そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当であって,上記おそれのある者は,埋立免許の取消しを求めるにつき,法律上の利益を有するとした上,前記埋立免許処分に係る埋立ての規模,土砂の性状,埋立工事の施工の順序及び方法等に照らすと,埋立工事に伴い汚濁の流出が反復継続され,埋立予定区域の周辺に居住する者らの健康や生活環境に著しい影響を及ぼすほど水質や底質が悪化するとは認められず,同人らの日常生活が埋立予定区域又はその周辺水域と密接な関係を有していることを考慮しても,その健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれが生じるとは認められないとして,埋立予定区域の周辺に居住する者の原告適格を否定した事例

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