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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行コ)308

事件名

 障害基礎年金不支給決定取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第222号)

裁判年月日

 平成18年11月29日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 国民年金法30条の4に規定する「その初診日において20歳未満であった者」の意義 
2 平成元年法律第86号による改正前の国民年金法により学生の国民年金への加入が任意とされていた当時,大学在学中に総合失調症の診断を受けたが,初診日において20歳以上の学生であって国民年金につき任意加入していなかったことから,障害基礎年金の不支給の処分を受けた者がした同処分の取消請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 国民年金法30条1項及び同法30条の4において,いずれもその支給要件の判定日を「初診日」と規定しているのは,大部分の傷病において発症日と初診日が接着しているという前提ないし擬制の下に,裁定機関による画一的かつ迅速な認定を実現するという観点から初診日をもって画一的に発症日と取り扱うことにしたものであるところ,総合失調症については,大部分は15歳から35歳までに発病し,本人に病識がないのが通常であること,社会の偏見もあって家族も困難な立場におかれること等の医学的,社会的要因により,発病から医師の診療を受けるに至るまでの期間が長期化しがちであるという特質があるから,20歳になる前に統合失調症を発症しても,その段階で医師の診療を受けるに至らず,病状が進行して,20歳を過ぎてから初めて医師の診療を受けることとなる事例は類型的に十分予想し得ることであり,このような者について,発症日と初診日が接着しているという前提を全く欠くにもかかわらず,前記「初診日」の要件を文言どおりに形式的に解釈して,同法30条の4の適用を拒むのは,同規定の本来の趣旨に反するものといわざるを得ないことなどからすると,統合失調症を発症し,医師の診療を必要とする状態に至った時点において20歳未満であったことが,医師の事後的診断等により医学的に確認できた者は,同法30条の4に規定する「その初診日において20歳未満であつた者」との要件を満たすと解するのが相当である。 
2 平成元年法律第86号による改正前の国民年金法により学生の国民年金への加入が任意とされていた当時,大学在学中に総合失調症の診断を受けたが,初診日において20歳以上の学生であって国民年金につき任意加入していなかったことから,障害基礎年金の不支給の処分を受けた者がした同処分の取消請求につき,学生であって,20歳となってから,国民年金に任意加入することのないまま,医師による統合失調症の診療を受け,拠出制障害基礎年金の支給を受けられない者が,医師の事後的診断等により,統合失調症の症状が発現して医師の診療を受けることを必要とする状態となった時点が20歳前であると認められる場合には,国民年金法30条の4に規定する「その初診日において20歳未満であつた者」との要件を満たすと解するのが相当であるとした上,前記の者は,医師の診断により,20歳となる前に統合失調症の症状が発現し,医師の診療を受けることが必要となったことを医学的に証明しているから,前記処分時において,同条の規定に基づく障害基礎年金の支給要件を満たしていたと認められるとして,前記請求を認容した事例

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