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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)7

事件名

 公文書部分開示決定処分取消請求控訴事件〔原審・津地方裁判所平成16年(行ウ)第33号の5〕

裁判年月日

 平成18年6月15日

裁判所名

 名古屋高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 県の総務局税務調査プロジェクトに係る旅費の支出負担行為兼支出命令書添付の旅費請求内訳書のうち,「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」,「宿泊先」欄の「市区町村」の一部に記載された情報が,三重県情報公開条例7条4号所定の公共安全情報及び同条6号所定の事務事業情報に該当しないとされた事例 
2 県の総務局税務調査プロジェクトに係る旅費の支出負担行為兼支出命令書添付の旅費請求内訳書のうち,「摘要」欄及び「特別承認事項」欄の一部に記載された情報が,三重県情報公開条例7条4号所定の公共安全情報及び同条6号所定の事務事業情報に該当するとされた事例
3 県の総務局税務調査プロジェクトに係る旅費の支出負担行為兼支出命令書の一部につき,三重県情報公開条例7条4号所定の公共安全情報及び同条6号所定の事務事業情報に該当するとして,それらの部分を非開示とする部分開示決定処分が,旅費支出に関する公文書は全面開示とする旨定める旅費,食糧費等に関する開示基準規則(平成8年三重県規則第57号)3条に違反することを理由に違法とはならないとされた事例

裁判要旨

 1 県の総務局税務調査プロジェクトに係る旅費の支出負担行為兼支出命令書添付の旅費請求内訳書のうち,「用務先」欄の「施設名」及び「市区町村」並びに「宿泊先」欄の「市区町村」の一部に記載された情報につき,前記プロジェクトに係る調査は,犯罪の予防,捜査と関連し刑事司法手続に準ずるものであるから,同調査に関する情報であって公にすることにより公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは,三重県情報公開条例7条4号に定める公共安全情報に含まれるところ,同号にいう前記支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報か否かを判断するに際しては,実施機関によって判断の基礎とされた重要な事実に誤認があることなどによりその判断が事実の基礎を欠くかどうか,又は事実に対する評価が合理性を欠くことなどによりその判断が社会通念に照らし妥当性を欠くことが明らかかどうかとの基準によるのが相当であるとした上,前記各欄には,前記プロジェクトの職員が不正軽油の密造による軽油引取税の脱税事件の調査のために赴いた用務先の施設名及びその所在地の市区町村名並びに前記職員がその際に宿泊した場所の市区町村名が記載されているところ,開示請求者が開示を求めている期間中の調査の対象である犯則事件の嫌疑者は,部分開示決定処分当時において既に逮捕されており,その調査は既に終了していたものと推認されるから,調査対象になっている者らによる隠ぺい工作等のおそれはなく,また,調査の対象となっていない者らが,調査の対象となっていないことを知って軽油密造行為をさらに拡大したり,新たな行為が企図されたりするおそれがあることをもって,直ちに公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由があるとまで認めることはできないことなどからすると,前記各情報は,前記条例7条4号所定の公共安全情報には該当せず,また,前記各情報に係る調査は既に終了しているものと推認されるのであるから,同情報を開示しても,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあるとも認められず,前記条例7条6号所定の事務事業情報にも該当しないとした事例
2 県の総務局税務調査プロジェクトに係る旅費の支出負担行為兼支出命令書添付の旅費請求内訳書のうち,「摘要」欄及び「特別承認事項」欄の一部に記載された情報につき,前記各欄には,前記プロジェクトにおける内偵調査等の手法,体制が記載されているところ,これらの情報を開示すれば,将来において別の犯則事件の内偵調査等に影響を及ぼし,あるいは著しい支障をもたらすおそれがあるから,三重県情報公開条例7条4号所定の公共安全情報に該当するとした実施機関の判断は裁量権の範囲内にあり,また,同様の理由により,同条6号所定の事務事業情報にも該当するとした事例
3 県の総務局税務調査プロジェクトに係る旅費の支出負担行為兼支出命令書の一部につき,三重県情報公開条例7条4号所定の公共安全情報及び同条6号所定の事務事業情報に該当するとして,それらの部分を非開示とする部分開示決定処分が,旅費支出に関する公文書は全面開示とする旨定める旅費,食糧費等に関する開示基準規則(平成8年三重県規則第57号)3条に違反することを理由に違法となるかにつき,条例が優先的効力を有するものであり,規則の解釈に当たっては条例の内容に適合するように合理的に行う必要があるとした上,前記規則は,旅費,食糧費等の透明性を確保することを目的として制定されたものであるが,犯罪の予防,捜査の遂行という公共の安全と秩序の維持という極めて重大な利益に支障を及ぼす場合にまで,前記規則3条の規定について,前記条例7条所定の非開示情報に該当する場合でも一律に実施機関に開示を義務付けているものと解釈することは相当でないなどとして,前記処分は,前記規則3条に違反すること理由に違法とはならないとした事例

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