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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行コ)315

事件名

 行政文書不開示決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第74号)

裁判年月日

 平成18年11月29日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 宮内庁病院に納入する医薬品の見積書上の「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の情報に当たらないとされた事例 

2 宮内庁病院に納入する医薬品の見積書上の「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条4号所定のいわゆる公共秩序維持情報に当たらないとされた事例

裁判要旨

 1 宮内庁病院に納入する医薬品の見積書上の「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分につき,同印影は,代表者の登録印による印影ではなく,社印と割印による印影であるところ,社印及び割印は,取引先なら広く開示し,特に限定した相手にしか開示しないといった管理はしていないこと,それらによる印影は,取引相手にとっては,普通,それが本物かどうか照合する手段を持たないのであるから,その認証機能は弱いものであり,また,そのため,そのような印影を手に入れて,それを基に印鑑が偽造されるおそれはそれほど高くないこと等を考えると,前記印影は,契約書その他の文書の作成名義やその権限の所在について一定の認証機能を果たしているものということはできるものの,これを開示することにより,印影の偽造による重要書類の偽造を容易にし,前記見積書を作成した法人等の財産や営業等の経済活動等への不法な侵害を招くおそれがあるとまでは認め難く,そのおそれがあることを理由として,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の情報に該当するとするのは,同法の目的,行政文書を原則公開とし,同法5条各号に掲げる事由がある場合に限って不開示とすることを認めた同法の趣旨に照らし,相当でないとして,前記部分が同条2号イ所定の情報に当たらないとした事例 
2 宮内庁病院に納入する医薬品の見積書上の「納入者住所氏名印」欄の法人印及び代表者印又は支店長印による印影部分が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条4号所定のいわゆる公共秩序維持情報に当たるかにつき,同号は,個人や法人その他の団体に関する情報を公にすることにより,それが個人的法益を侵害する犯罪行為を誘発し,当該個人等が個別的に被害を受ける場合を予定したものではないとみるのが相当であり,こうした情報を公にすることにより当該個人等が犯罪の被害を受けるおそれがある場合については,当該個人等の利益を保護することを直接の目的として,同法5条1号柱書本文及び2号イが別途規定されており,これとは別に,その文言上,不開示事由該当性の第一次的な判断を行政機関の裁量にゆだねた趣旨と解される同法5条4号の適用対象とする必要性,合理性は見いだし難いとして,前記部分が前記公共秩序維持情報に当たらないとした事例

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