裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成18(行コ)37
- 事件名
違法公金支出返還請求控訴事件(原審・静岡地方裁判所平成12年(行ウ)第23号,差戻前の控訴審・東京高等裁判所平成15年(行コ)第101号,上告審・最高裁判所平成15年(行ヒ)第299号)
- 裁判年月日
平成18年9月26日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 県が県議会議員の職にあった者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために行った補助金の支出が地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断に関する県の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号前段に基づき,県に代位して,県知事,県議会事務局次長兼県総務課長各個人及び元県議会議員会に対してされた不法行為に基づく損害賠償の請求が,いずれも棄却された事例 2 県が県議会議員の職にあった者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために行った補助金の支出が地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断に関する県の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号後段に基づき,県に代位して,元県議会議員会に対してされた不当利得返還請求が,一部認容された事例
- 裁判要旨
1 県が県議会議員の職にあった者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために行った補助金の支出が地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断に関する県の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号前段に基づき,県に代位して,県知事,県議会事務局次長兼県総務課長各個人及び元県議会議員会に対してされた不法行為に基づく損害賠償の請求につき,前記支出は違法であるが,県は県議会議員の職にあった者に対する礼遇について礼遇規程を制定し,これを受けて元県議会議員会の運営費を補助するための交付要綱を定めた上,長年に渡り継続して補助金を交付してきたこと,請求に係る補助金も,一般予算に組み込まれて議会の議決を経た上,県の補助金等交付規則及び前記交付要綱に基づき,かつ,財務規則に従った手続により交付,支出されたこと,同様の補助金は当時他の10都道県で交付されていたこと,同様の補助金の支出について,「公益上必要がある場合」に当たらないとする定説はなかったこと及び本件に係る差戻し前の第1審,第2審は,「公益上必要がある場合」に当たると判断し,上告審も,およそ県議会議員の職にあった者に対する礼遇として元県議会議員会の内部的な事業に要する経費を補助すること自体が違法であるとしたのではなく,「県議会議員の職にあった者に対する礼遇として社会通念上是認し得る限度を超えて補助金を交付する」という点において違法であると判断したものであることを考慮すると,県知事において,専決権者が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反して故意又は過失により専決権者が違法行為をすることを阻止しなかったものとはいえず,県議会事務局次長兼県総務課長についても,故意又は重過失があったとはいえず,元県議会議員会にも故意又は過失があったとはいえないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例
2 県が県議会議員の職にあった者を会員とする元県議会議員会の事業を補助するために行った補助金の支出が地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断に関する県の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号後段に基づき,県に代位して,元県議会議員会に対してされた不当利得返還請求につき,前記支出は同法232条の2に違反し,そのことにより直ちに私法上無効となるものではないものの,県が県議会議員の職にあった者など県の関係者に対する礼遇として補助金を交付する場合には常にそれがいわゆるお手盛りとなって社会通念上是認し得る限度を超えて交付する危険性があるのであるから,もしその補助金の交付が違法であっても当該補助金の交付に関する私法上の契約は無効ではないとしてその返還を命じ得ないとすれば,そのようなお手盛りを防止することはできなくなるのであり,ひいて,普通地方公共団体は補助金の交付を「公益上必要がある場合」に限り行うことができるとした地方自治法232条の2の規定の趣旨を没却する結果となるから,前記補助金の交付に関する私法上の契約はこれを無効とすべき特段の事情があるものというべきであるとして,前記請求を一部認容した事例
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