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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行コ)109

事件名

 生活保護変更決定取消等請求控訴事件(原審 京都地方裁判所平成15年(行ウ)第19号)

裁判年月日

 平成18年12月21日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 生活保護を受給していた者が障害基礎年金を受給することになったとしてされた,生活保護費のうち同年金相当額を減額する保護変更決定が,適法とされた事例 
2 生活保護を受給していた者が障害基礎年金をさかのぼって受給することになったとしてされた,既に支給されていた生活保護費のうち,さかのぼって受給した同年金相当額から前記の者から申出のあった電子レンジ及び洗濯機の購入費用に相当する金額を控除した金額の返還を命ずる決定が,適法とされた事例

裁判要旨

 1 生活保護を受給していた者が障害基礎年金を受給することになったとしてされた,生活保護費のうち同年金相当額を減額する保護変更決定につき,生活保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件とし,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行われるものであり,最低限度の生活の需要を満たすのに十分であって,かつ,これを超えないものでなければならないところ,受給者が支給を受けることになった障害基礎年金は,生活保護法4条1項にいう「利用し得る財産」又は同法8条1項にいう「その者の金銭」であるということができるから,これを収入認定して保護費を減額した前記変更決定が違法であるということはできず,また,障害基礎年金は,国民年金制度の目的,障害基礎年金の支給要件,支給額,併給調整の定め等に照らすと,稼得者の障害という稼得能力の減少,喪失に伴う所得の減少,喪失を補うために支給されるものであることは明らかであるから,これを全額収入として認定することが生活保護法の趣旨や社会通念に反するものということはできないとして,前記保護変更決定を適法とした事例 
2 生活保護を受給していた者が障害基礎年金をさかのぼって受給することになったとしてされた,既に支給されていた生活保護費のうち,さかのぼって受給した同年金相当額から前記の者から申出のあった電子レンジ及び洗濯機の購入費用に相当する金額を控除した金額の返還を命ずる決定につき,生活保護法63条の規定する保護実施機関が定める返還額については,当該世帯の自立更生等のためにやむを得ない用途に充てられたものかどうか,地域住民との均衡を考慮し,社会通念上容認される程度であるかどうか,同条に規定する保護金品の全額を返還額とすることが当該世帯の自立を著しく阻害するかどうかについての保護実施機関の判断に合理性がなく,その判断について,裁量権の逸脱ないし濫用がある場合には違法となるとした上,前記の者が,同法63条に基づく返還金額からの控除対象として,電子レンジ及び洗濯機の購入費用の控除を求め,その他の物品について設置や購入等を希望するようなことはなかったこと等に照らすと,前記決定に当たり,申出のあった電子レンジ及び洗濯機の購入費用のみを控除した福祉事務所長の判断に裁量権の逸脱,濫用があるということはできないなどとして,前記決定を適法とした事例

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