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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ク)345

事件名

 執行停止申立事件(本案 当庁平成18年(行ウ)第653号建築認定処分取消等請求事件)

裁判年月日

 平成19年1月24日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 外国国家に対し,東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定及び同区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認の各取消訴訟において,当該外国国家は,我が国の民事裁判権及び行政裁判権から免除されないとされた事例
2 外国国家に対し,東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定及び同区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認が,いずれも抗告訴訟の対象となる処分に当たるとされた事例
3 東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定の効力の停止を求める申立てが,申立ての利益がないとして却下された事例
4 東京都の特別区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認の効力の停止を求める申立てが認容された事例

裁判要旨

 1 外国国家に対し,東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定及び同区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認の各取消訴訟において,当該外国国家に我が国の民事裁判権及び行政裁判権が及ぶかにつき,外国国家の行為が,主権的行為ではなく私法的ないし業務管理的な行為であると認められる場合には,我が国による民事裁判権又は行政裁判権の行使が当該外国国家の主権を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り,当該外国国家の行為について当該外国国家を相手方としてされた処分が違法であるか否か等が裁判手続において争われれば,我が国の裁判所は,これについて判断することができるとした上,前記外国国家は,既に我が国において使節団の公館に供するための建物を取得してこれを利用しているところ,これに替えて別の建物を取得する行為を直ちに外交活動の一環であるということは当然にはできず,これを外交活動の一環であると認めるべき諸事情も認められないから,同行為は,当該外国国家の主権的行為であるとは認められず,さらに,外国国家は建物の建築によって当該建物の所有権を有効に取得することができるから,前記各取消訴訟は,外国国家の所有に係る不動産を直接目的とする権利関係の訴訟であり,法廷地国の裁判権に服すると解されている法廷地国内に所在する不動産に関する訴訟に該当すると解されることからすると,前記各取消訴訟において,当該外国国家は,我が国の民事裁判権及び行政裁判権から免除されないとした事例
2 外国国家に対し,東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定及び同区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認につき,処分の相手方が外国国家である場合には,主権平等の見地から,我が国の行政庁が一方的に意思決定をした結果につき外国国家にその受忍を当然に強制し得るということはできないことなどからすると,外国国家を相手方とする処分は,これに服する旨の当該外国国家の同意がある場合に限り,有効な処分ということができると解するのが相当であるところ,利益処分の相手方となろうとする外国国家と当該処分がされることによって法律上不利益を受ける者又はそのおそれのある者との間に当該処分がされることをめぐる紛争が存在するという状況の下において,当該外国国家が当該処分をすることを求める旨の申請を書面によって行った場合,前記紛争に対する裁定を求める趣旨ではないと認められる特段の事情のない限り,当該処分に服する旨の同意があるといえるとした上,前記外国国家は,近隣住民との間に前記認定及び確認をすることの適法性をめぐる紛争が存在する中,前記区長に対し前記認定をすることを求める旨の申請を行い,さらに,前記認定がされた後,前記建物に関する建築計画概要書を前記建築主事に提出していることからすると,前記認定及び確認に服する旨の前記外国国家の同意があるといえるとして,いずれも抗告訴訟の対象となる処分に当たるとした事例 
3 東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定の効力の停止を求める申立てにつき,行政事件訴訟法25条2項本文に定める処分の効力の全部又は一部の停止は,処分の効力の全部又は一部の停止を命ずる決定がされた以降の将来に向かって当該決定の対象とされた処分の効力を停止させるにすぎないところ,前記建物について建築確認がされた時点においては,前記認定は効力を有していたのであるから,前記認定の効力が停止されたとしても,建築主事がした建築確認がさかのぼって違法となるわけではなく,前記建物を建築することができなくなるものではないから,前記建物の建築を止めることによって重大な損害を避けるという目的を達成することはできず,申立ての利益がないとして,前記申立てを却下した事例
4 東京都の特別区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認の効力の停止を求める申立てにつき,同確認に係る建物によって生ずる日影の発生により,同建築物の敷地の隣接地上の建物の冬至日の日照時間が午前中の約4.5時間から約1.5時間だけに減少すること及び同建物には南向きの部屋がないことから,このような日照被害は,行政事件訴訟法25条2項本文にいう「重大な損害」に当たり,前記認定に係る建物の敷地の周囲は,狭小な敷地のない密集の度合いの低い市街地を形成しており,前記敷地の西側,北側及び南側には火災が発生したときに消火避難活動を容易にすることができるようにするための空き地として使用することができる場所がないことなどから,前記区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定が違法と判断される可能性もあると考えられるところ,同認定が違法であるとして取り消されれば,前記確認は,前記条例4条2項に違反するものとして,違法であるということになるから,本案について理由がないとみえるとはいえないなどとして,前記申立てを認容した事例

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