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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)597

事件名

 法人税更正処分等取消請求事件

裁判年月日

 平成19年1月31日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 電気事業者が,その保有する火力発電設備について,電気事業法等に基づく廃止のための手続を執った上で,一括してその設備全部につき,いわゆる有姿除却(対象となる固定資産が物理的に廃棄されていない状態で税務上除却処理をすること)に係る除却損を計上し,これを損金の額に算入して確定申告をしたのに対し,税務署長が,各発電設備を構成する個々の資産のすべてが固定資産としての使用価値を失ったことが客観的に明らかではなく,今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないとは認められないなどとして,前記損金算入を否定してした増額更正及び過少申告加算税の賦課決定が,違法とされた事例

裁判要旨

 電気事業者が,その保有する火力発電設備について,電気事業法等に基づく廃止のための手続を執った上で,一括してその設備全部につき,いわゆる有姿除却(対象となる固定資産が物理的に廃棄されていない状態で税務上除却処理をすること)に係る除却損を計上し,これを損金の額に算入して確定申告をしたのに対し,税務署長が,各発電設備を構成する個々の資産のすべてが固定資産としての使用価値を失ったことが客観的に明らかではなく,今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないとは認められないなどとして,前記損金算入を否定してした増額更正及び過少申告加算税の賦課決定につき,電気事業会計規則にいう「電気事業固定資産の除却」とは,既存の施設場所におけるその電気事業固定資産としての固有の用途を廃止することを意味するものと解するのが相当であるとした上,前記火力発電設備は高効率の新規発電設備に比べ経済性が劣るもの等であったこと,前記電気事業者において,電力小売部分自由化の実施等の経営環境の変化を受けて,経年火力発電所対策が重要な経営課題とされていたことから,廃止ユニット候補として,前記火力発電設備が選定され,所定の社内手続及び電気事業法に基づく届出の手続を経て,遮断器の投入,遮断回路の配線が切断され,廃止に至ったものであること,仮に,前記火力発電設備を再稼働させようとすると,新規に火力発電所を建設する場合と同様に,多大の費用と時間を投じて電気事業法等に基づく手続を経なければならない上,廃止した設備及び機器の全面的な点検,修理必要箇所の工事,検査,試運転等を行わなければならず,そのためには通常の点検を大幅に超える費用と時間がかかると想定されるが,前記電気事業者がそのような選択をするはずがないことは,社会通念上明らかということができること等に照らすと,前記火力発電設備は,電気工作物変更届に記載された廃止日の時点で,将来再稼働される可能性はないというべきであり,発電という機能を二度と果たすことがなくなった以上,前記火力発電設備を構成する電気事業固定資産の既存の施設場所における固有の用途も完全に失われたことになるから,電気事業会計規則14条にいう「電気事業固定資産の除却」の要件が充足されるとして,前記各決定を違法とした事例

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