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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)65

事件名

 損害賠償請求事件

裁判年月日

 平成19年2月9日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 茨木市報酬及び費用弁償条例(昭和40年茨木市条例第17号,平成15年茨木市条例第36号による改正前)9条に基づく専門委員及び非常勤の嘱託員の範囲及び報酬の支給額に関する内規(昭和40年茨木市訓令第9号,平成16年茨木市訓令第10号による改正前)により市の非常勤の嘱託員に報酬を支給したことは地方自治法の定める給与条例主義に違反し違法であり,市は同嘱託員に対して支給した報酬相当額の損害を被ったなどと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当時の市長個人に損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求が,認容された事例

裁判要旨

 茨木市報酬及び費用弁償条例(昭和40年茨木市条例第17号,平成15年茨木市条例第36号による改正前)9条に基づく専門委員及び非常勤の嘱託員の範囲及び報酬の支給額に関する内規(昭和40年茨木市訓令第9号,平成16年茨木市訓令第10号による改正前)により市の非常勤の嘱託員に報酬を支給したことは地方自治法の定める給与条例主義に違反し違法であり,市は同嘱託員に対して支給した報酬相当額の損害を被ったなどと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当時の市長個人に損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求につき,地方自治法203条,204条及び204条の2の各規定並びに地方公務員法24条6項,25条の各規定の趣旨及びその沿革等にかんがみると,これらの規定が普通地方公共団体の職員の給与に関していわゆる給与条例主義を定めている趣旨は,普通地方公共団体の職員に対して法定の種類の給与を権利として保障するとともに,給与の額及びその支給方法の決定を普通地方公共団体の住民の直接選挙により構成される議事機関である議会が制定する条例にゆだねることにより,これに対する民主的統制を図ったものであると解され,このようないわゆる給与条例主義を定めた法令の規定の趣旨に加えて,普通地方公共団体の職員に対する給与に関する前記各法令の規定の文言及びその沿革にもかんがみると,これら法令の規定は,普通地方公共団体の職員に対する給与について,常勤の職員の場合であると非常勤の職員の場合であるとを問わず,その支給要件及び支給額を条例において具体的に規定することを予定しており,事柄の性質上その決定を普通地方公共団体の長又はその制定する規則にゆだねることを一切許容しない趣旨のものとまでいうことはできないものの,これを規則等の定めにゆだねる場合においても,少なくとも当該種類の給与の支給要件該当性及び支給額を決定するための具体的な基準が当該条例自体から読み取れる程度に条例においてこれを具体的に規定することを要するものと解すべきであり,条例において単に給与の支給根拠のみを定め,具体的な額,支給要件等の基本的事項をすべて普通地方公共団体の長又は規則に委任するようなことは,給与条例主義の趣旨に反し,許されないものというべきであるとした上,前記条例2条及び別表中非常勤の嘱託員についての報酬を定めた部分は,その性格上その職務内容,勤務態様が多種多様の非常勤の嘱託員を包括的に「非常勤の嘱託員」と区分した上で,これに対応する報酬について日額又は月額の各最高限度額(上限)のみを規定し,当該範囲内での具体的な金額の決定のみならず当該報酬を月額支給とするか日額支給とするかの決定をも任命権者にゆだねたものであり,前記条例の関係規定から当該報酬を月額支給とするか日額支給とするかの決定をも含めた個々の非常勤の嘱託員に対する報酬額を決定するための具体的基準を読み取ることもできないから,前記条例2条及び別表中非常勤の嘱託員に対する報酬を定めた部分は,地方自治法203条2項,5項,204条の2の各規定に抵触し,違法といわざるを得ず,また,市長は,前記条例2条,別表中非常勤の職員に対する報酬を定めた部分が給与条例主義の趣旨に反するおそれがあることを容易に知り得たというべきであり,他方で,非常勤の嘱託員の報酬について,給与条例主義の趣旨に反しない程度に条例において具体的に規定することが,立法技術的にみてさほど困難があると認めることもできないにもかかわらず,市長として,前記条例の改正手続をとるなどの措置を講ずることなく,訓令にすぎない支給内規の一部を市長決裁により改正する手続により,非常勤の嘱託員に報酬を支給したことに過失があると評価せざるを得ないとして,前記請求を認容した事例

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