裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行コ)35

事件名

 損害賠償等請求控訴事件(原審・熊本地方裁判所平成13年(行ウ)第3号)

裁判年月日

 平成19年2月19日

裁判所名

 福岡高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 国,県,市等が出資したいわゆる第三セクターである株式会社に資金融資を行った金融機関に対し,市が損失補償として公金を支出し,又は支出しようとすることは違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき市に代位して市長個人に対してされた損害賠償請求及び同項1号に基づき市長に対してされた前記支出の差止請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 国,県,市等が出資したいわゆる第三セクターである株式会社に資金融資を行った金融機関に対し,市が損失補償として公金を支出し,又は支出しようとすることは違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき市に代位して市長個人に対してされた損害賠償請求及び同項1号に基づき市長に対してされた前記支出の差止請求につき,前記損失補償としての公金の支出は,地方自治法232条の2にいう「補助」そのものではないものの,普通地方公共団体の行う支出である以上,公益上の必要性が認められない支出は許されないところ,損失補償の要否の決定は,当該普通地方公共団体の社会的,財政的状況及び他の行政政策との関連等諸般の事情を総合的に考慮した上での政策的判断であるから,公共上の必要性に関する判断には,普通地方公共団体の長に一定の裁量権があり,その逸脱又は濫用があったと認められる場合に,当該支出が違法になると解されるとした上,前記損失補償としての公金の支出についても,同法2条が定める地方自治行政の基本原則,地方財政法3条及び4条が定める地方財政運営の基本原則にかんがみ,地方自治法232条の2に規定する寄附又は補助をする場合と同様に,公益上の必要性が認められないような支出をすることは許されないところ,公益上の必要性の有無については,これを一義的に決定することは困難であり,それぞれの地方公共団体における社会的,経済的,地域的諸事情の下において,当該支出に係る行政目的に照らした政策的な考慮に基づく個別具体的な判断がされるべきものであるから,第一次的には,地方公共団体の長等が判断し,同地方公共団体の長等の判断に裁量権の逸脱,濫用がある場合には,当該支出は公益上の必要性が認められず,違法,不当であると判断すべきであるとした上,前記損失補償契約を締結した時点において,経営が悪化した前記会社に対し,市が経営再建の金融支援をすることなく,同会社を破綻させ,同会社の事業を頓挫させた場合の,同会社の出資者である国,県,地場企業との信頼関係の喪失による悪影響や,市が今後も実施を予定している地域振興対策事業に対する国や県の支援,協力等に支障が出るおそれ等を考慮すると,損失補償契約を締結し,損失補償の支出に至ったことが,市長の裁量権を逸脱した違法,不当なものであるとはいえないとして,前記請求をいずれも棄却した事例

全文