裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成18(行コ)97
- 事件名
損害賠償請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成16年(行ウ)第75号)
- 裁判年月日
平成19年3月28日
- 裁判所名
大阪高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
10年以上勤続して退職した職員について一律に退職時に特別昇給を行ったことが職員の給与に関する条例(昭和31年大阪市条例第29号,平成17年大阪市条例第20号による改正前)に違反し違法であり,市は前記特別昇給に基づいて支出された退職手当増加分相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人に損害賠償請求をすることを市長に対し求める請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
10年以上勤続して退職した職員について一律に退職時に特別昇給を行ったことが職員の給与に関する条例(昭和31年大阪市条例第29号,平成17年大阪市条例第20号による改正前)に違反し違法であり,市は前記特別昇給に基づいて支出された退職手当増加分相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記損害のうち,監査委員の勧告を受けて第三者弁済により補てんされた20年以上勤続に満たない者,勤続期間中に懲戒処分を受けた者及び勤怠不良で退職手当の減額措置を受けた者に対する支出に係る部分を除く部分について,市長個人に損害賠償請求をすることを市長に対し求める請求につき,前記条例5条6項が特別昇給の要件と規定する「市長が特に必要と認めた場合」については,その判断を広く市長の裁量にゆだねることは,地方公務員法24条6項,25条2項,地方自治法204条3項,204条の2に定める給与条例主義の許容するところではないというべきであり,この規定は,勤務成績が特に優秀である場合と同等の評価が得られる事由を市長がその合理的な裁量により認めた場合に特別昇給を行うことができるものとする趣旨の規定であると解されるが,20年以上勤続した者であって,かつ,勤続期間中に懲戒処分又は勤怠不良による退職金の減額措置を受けたことがない者は,国の場合の人事院規則9−8(平成16年人事院規則9−8−52による改正前)39条からしても,「勤務成績が特に優秀である場合と同等の評価が得られる事由」を具備した者と認められないわけではなく,各地方公共団体は,退職時特別昇給についても,国家公務員の取扱いに準じて実施してきており,現に,同市においても,前記条例5条6項において,国家公務員の場合の,一般職の職員の給与に関する法律(平成17年法律第113号による改正前)8条7項に準じた内容を定め,これに基づいて,前記特別昇給を行ったが,国においては,平成16年5月に同制度が廃止されるまで,特別昇給を適用するについての勤務成績が良好であるという要件を緩やかに解釈し,実際には20年以上勤務して退職する職員のほぼ全員について広く退職時特別昇給を認める運用をしてきたものであることに照らすと,市長らにおいて「勤務成績が特に優秀である場合」を満たすかどうかの判断は行わずに,前記退職者らにつき,退職時特別昇給及びこれに基づく退職手当の支給を行ったことにも一定の合理性があったというべきであるから,市長の裁量権の範囲内にあるということができ,前記条例5条6項に反する違法なものということはできないとして,前記請求を棄却した事例
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