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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)25

事件名

 違法公金支出による損害賠償請求履行請求住民訴訟控訴事件(原審・福島地方裁判所平成17年(行ウ)第13号)

裁判年月日

 平成19年3月29日

裁判所名

 仙台高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 市水道局が,全国紙全県版のいわゆる就任祝賀広告に「市水道局」との協賛広告を載せてその広告料を支出したことが,行政の政治的中立義務等に違反する違法なものであるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当時の市水道事業管理者個人に損害賠償の請求をすることを市水道事業管理者職務代理者に対して求める請求が,認容された事例

裁判要旨

 市水道局が,全国紙全県版のいわゆる就任祝賀広告に「市水道局」との協賛広告を載せてその広告料を支出したことが,行政の政治的中立義務等に違反する違法なものであるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当時の市水道事業管理者個人に損害賠償の請求をすることを市水道事業管理者職務代理者に対して求める請求につき,地方公営企業も,その社会的実体を有するものとして活動するのであるから,円滑な企業運営を図るために社交儀礼上の活動を行うことは許されており,そのために支出することも社会通念上相当と認められる範囲である限り,許されるものであるが,地方公営企業の管理者や幹部職員については,政治的中立義務が課されていることからすれば,地方公営企業の経営に当たっても政治的中立性が求められているものというべきであり,地方公営企業の政治的中立性を害するとみられる支出は,たとえそれが社会儀礼上の行為に係るものであり,その額がわずかであったとしても,社会通念上相当とされる支出とはいえないというべきであるとした上で,前記のいわゆる祝賀広告への協賛広告は,これを見た者をして市水道局が,市出身である特定の政党に属する政治家が政党の県連会長や県議会議長に就任したことに祝意を表していること,すなわち特定の政党や政党に属する政治家に好意ないし応援の意思を表明しているとの印象を世間に広く抱かせるものといわざるを得ず,地方公営企業の政治的中立性を害するものであるというべきであり,市水道局は,実際に新聞に掲載された前記協賛広告の内容を知りながら前記支出に至ったものであるから,前記支出は政治的中立性を害する事項に係る支出として,裁量権を逸脱した違法なものであり,これによって市水道局は損害を被ったとして,前記請求を認容した事例

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