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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)250

事件名

 解任処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(行ウ)第668号)

裁判年月日

 平成19年4月17日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 旧日本道路公団法(昭和31年法律第6号,平成16年法律第102号により廃止)13条2項柱書所定の「その他役員たるに適しないと認めるとき」に当たることを理由として,国土交通大臣から日本道路公団総裁を解任された者が,同解任処分の理由となる事実は存在せず,また,同処分手続に違法があるとしてした同処分の取消請求が,棄却された事例 
2 国土交通大臣がした日本道路公団総裁の解任処分が,聴聞の通知書中に,予定される不利益処分の根拠となる法令の条項として「日本道路公団法13条2項」とのみ記載された場合において,行政手続法15条1項1号の根拠となる法令の条項が特定されており,手続上の違法があるとはいえないとされた事例

裁判要旨

 1 旧日本道路公団法(昭和31年法律第6号,平成16年法律第102号により廃止)13条2項柱書所定の「その他役員たるに適しないと認めるとき」に当たることを理由として,国土交通大臣から日本道路公団総裁を解任された者が,同解任処分の理由となる事実は存在せず,また,同処分手続に違法があるとしてした同処分の取消請求につき,総裁には,高度の公共的性格を有する重要な業務を担う同公団を代表し,その職務を総理するという広範かつ重大な職務権限に対応して,同公団の業務を適切かつ円滑に遂行するために高度の資質,能力等が要求されるというべきところ,前記「その他役員たるに適しないと認めるとき」とは,当該「役員」が総裁である場合は,何らかの客観的合理的理由により,総裁が前記のとおり要求される高度の資質,能力等を欠くものと国土交通大臣が認めるに至ったときを指すものと解するのが相当であるとした上,次の(1)及び(2)の事実をもって前記「その他役員たるに適しないと認めるとき」に当たると判断したことは相当であり,同処分手続にも違法な点はないとして,前記請求を棄却した事例
 (1)平成15年5月に日本道路公団が債務超過に陥っていることを示すとされた財務諸表を入手したとする新聞報道がされたことに関し,速やかに役員及び職員を指揮して事実関係を正確に調査,把握し,かつ説明する等の適切な対応をとるべきであるのにこれを怠り,同年8月に至るまでそのデータの存在すら確認できなかったばかりか,国会,マスコミ等に一方的な見解に基づく対応に終始するなどし,日本道路公団に対する国民の信頼を著しく損ねる結果を生じさせた事実
 (2)ある会合をめぐる報道等に関し,国会における質問に対して正確な事実関係を確認するための適切な対応を行わず,不誠実な答弁を繰り返し,当該会合において発言したとされた内容が,総裁自身が日本道路公団の役職員を信頼していないと受け取られるような内容であったにもかかわらず,同発言に関する適切な説明等を行わず,公団組織内における総裁と役員及び職員間の信頼関係を著しく損ねる結果となった事実 
2 国土交通大臣がした日本道路公団総裁の解任処分が,聴聞の通知書中に,予定される不利益処分の根拠となる法令の条項として「日本道路公団法13条2項」とのみ記載された場合につき,同聴聞通知書における不利益処分の原因となる事実の最終段落では,「これらのことから総合的に判断すれば,貴職については,高速道路に関する制度を抜本的に改革する重要な時期を迎える公団の総裁として十分な資質を有していないと言わざるを得ず,このことが日本道路公団法第13条第2項に該当すると認められる。」と記載されているから,同聴聞通知書を受領した不利益処分の名あて人となるべき者としては,旧日本道路公団法(昭和31年法律第6号,平成16年法律第102号により廃止)13条2項が,同公団の役員の解任事由として,同項1号,2号及び柱書の三つの処分要件を規定しているうち,同項柱書による解任処分をしようとしていることを理解することができるから,行政手続法15条1項1号所定の根拠となる法令の条項は特定されており,手続上の違法があるとはいえないとした事例 

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