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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)8

事件名

 公有水面埋立免許処分取消請求事件

裁判年月日

 平成19年3月19日

裁判所名

 松江地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 県知事が原子力発電所の増設のためにした公有水面埋立免許処分の取消しを求める訴えにつき,埋立予定地周辺に土地を所有し,同土地及びその周辺の土地において所有権に基づき,又は陸地における慣習法上の入会権若しくは公有水面における漁業協同組合の組合員としての漁業を営む権利に基づき,岩のり等を採取する権利を有すると主張する者らの原告適格を否定した事例

裁判要旨

 県知事が原子力発電所の増設のためにした公有水面埋立免許処分の取消しを求める訴えにつき,公有水面埋立法5条各号の定めは限定列挙であって,同条2号の「漁業権者又ハ入漁権者」とは,漁業法に基づき,漁業権の設定を受けた者と解するのが相当であり,現行漁業法下において,慣習法上の漁業権を認めることはできず,組合員が漁業協同組合から独立した権利を有するものではない上,公有水面埋立法4条1項1ないし3号,同法47条2項及び同法3条は,専ら一般的な公益を保護する趣旨の規定と解するのが相当であるから,同法は,周辺住民,周辺漁民等の有する生活上若しくは営業上の環境利益又は周辺漁民が漁業協同組合の組合員として有する漁業を営む権利を,一般的公益の中に吸収されない個別的利益として具体的に保護すべきものとする趣旨を含むと解するのは困難であるが,同法4条1項2号は,災害防止につき十分な配慮がされないままに埋立免許処分がされると,埋立地及びその周辺地域において,護岸の破壊,高潮,津波,河川の氾濫等の災害が生じ,ひいては一定地域に居住する住民の生命,身体に直接かつ重大な被害を与えることから,そのような災害を防止するため,災害防止に十分配慮された場合に限り免許することとしたものと解されるから,同法は,不特定多数者の生命,身体等の安全を一般的公益の中に吸収解消し得ないものとして,個人的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当であるとした上,前記埋立免許処分に係る埋立予定地に土地を所有し,同土地及びその周辺の土地において所有権に基づき,又は陸地における慣習法上の入会権若しくは公有水面における漁業協同組合の組合員としての漁業を営む権利に基づき,岩のり等を採取する権利を有すると主張する者らは,岩のりの採取ができなくなるという財産上の損害を主張するに止まり,前記処分に係る埋立てによって災害が発生し,それによって同人らの生命,身体の安全が害されるおそれがあることを主張立証するものではないとして,同人らの原告適格を否定した事例

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