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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成13(行ウ)17

事件名

 産業廃棄物処理施設設置許可処分取消請求事件

裁判年月日

 平成19年8月21日

裁判所名

 千葉地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 産業廃棄物のいわゆる管理型最終処分場の設置に関し,県知事がした産業廃棄物処理施設の設置許可処分の取消しを求める訴えについて,前記処分場の建設予定地の周辺住民のうち,一定範囲の者の原告適格が肯定された事例
2 産業廃棄物のいわゆる管理型最終処分場の設置に関し,県知事がした産業廃棄物処理施設設置許可処分の取消請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 産業廃棄物のいわゆる管理型最終処分場の設置に関し,県知事がした産業廃棄物処理施設の設置許可処分の取消しを求める訴えにつき,廃棄物の処理及び清掃に関する法律は,管理型最終処分場について,その周辺に居住等し,当該施設から有害な物質が排出された場合に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当であるところ,ある者の居住等する地域が前記被害が想定される範囲か否かは,前記処分場の種類,規模,その者の居住等する地域の状況,その者の生活状況,前記処分場との位置関係等の具体的な諸条件を考慮に入れた上で,社会通念に照らして判断すべきであるとした上,前記処分場の建設予定地周辺の地下水を保有する地層は,前記予定地周辺の台地においておおむね同一の地層を形成しており,前記予定地周辺の地下水は前記台地全体に流入している可能性が否定できないから,前記台地内に居住等し,地下水を生活用水や農業用水等に直接利用している者については,前記処分場から人体に有害な物質を含有する浸出水が許容限度を超えて排出された場合に,生命又は身体に係る重大な被害を直接に受けるおそれがあることなどから,前記処分場の建設予定地の周辺住民のうち,前記台地内に居住し,そこでカーネーション栽培又は水田耕作を行っている者の原告適格を肯定した事例 
2 
産業廃棄物のいわゆる管理型最終処分場の設置に関し,県知事がした産業廃棄物処理施設設置許可処分の取消請求につき,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成13年法律第66号による改正前)15条の2第1項3号,同法施行規則(昭和46年厚生省令第35号,平成15年環境省令第30号による改正前)12条の2の3第2号の各規定は,人体に有害な物質を含む産業廃棄物の処理施設である管理型最終処分場については,設置者の経理的な基礎が不十分であることにより不適正な産業廃棄物の処分や同処分場の設置及び維持管理が行われた場合には,有害な物質が許容限度を超えて排出され,その周辺に居住等する者の生命,身体に重大な危害を及ぼすなどの災害を引き起こすことがあり得るので,前記周辺住民が重大な被害を被るおそれのある災害等が想定される程度に至る経理的基礎を欠くような場合には,もはや公益を図る趣旨にとどまらず,前記周辺住民の安全を図る趣旨から,前記周辺住民個人の法律上の利益に関係のある事由について定めているというべきであり,この事由により違法となる場合は,設置段階の設置者の資金計画等からして,およそ管理型最終処分場の適正な設置及び維持管理が困難であるとか,不適正な産業廃棄物の処分が行われるおそれが著しく高いなど,管理型最終処分場の周辺住民が生命又は身体等に係る重大な被害を直接に受けるおそれのある災害等が想定される程度に経理的基礎を欠くような場合に限られるというべきであるとした上で,管理型最終処分場の設置許可申請者は,前記処分時点で,既に前記処分場の十分な設置及び維持管理をするために必要な資金調達の裏付けを欠いていたばかりか,仮に何らかの方法でその調達ができたとしても,その後の事業運営や借入金返済に必要な費用を支出した場合に事業が適正に運営される基礎を欠いていたというべきであるから,前記設置許可申請者の経理的基礎は,前記処分時において,周辺住民の生命又は身体等に係る重大な被害を直接に受けるおそれのある災害等が想定される程度に経理的基礎を欠く状態にあるというべきであるから,前記処分は前記各規定に反する違法な処分であるとして,前記請求を認容した事例

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