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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)19

事件名

 違法公金支出返還請求控訴事件(原審・仙台地方裁判所平成16年(行ウ)第6号)

裁判年月日

 平成19年4月20日

裁判所名

 仙台高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 市が設置,運営する市立病院が,国立大学(当時)の医局に対して研究協力金の名称でした公金支出が違法無効であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長に対してされた,国立大学法人法に基づき前記大学が行う業務に関する権利義務を承継した国立大学法人に対して不当利得返還請求をするよう求める請求が,棄却された事例

裁判要旨

 市が設置,運営する市立病院が,国立大学(当時)の医局に対して研究協力金の名称でした公金支出が違法無効であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長に対してされた,国立大学法人法に基づき前記大学が行う業務に関する権利義務を承継した国立大学法人に対して不当利得返還請求をするよう求める請求につき,地方財政再建促進特別措置法(平成10年法律第62号による改正前等。以下「地財再建法」という。)24条2項は,地方公共団体の国等に対する自発的寄附又は任意負担を原則禁止とすることにより財政の健全化を図るため,同項ただし書に当たる場合を除き,強制的なものであるか任意的なものであるか,国が本来負担することを予定しているものか否か,それが当該地方公共団体にとって必要ないし利益であるか否かに関わりなく,全てこれを禁止したものと解されるところ,前記研究協力金は,医局に対する研究助成という使途の負担が付いた寄附金であると認められ,医局は国立大学とは別個の実体をもつものではあるものの,医局管理の寄附金は,国の所有管理にかかる校費等の資金と別個に管理されているとはいえ,使途がせつ然と区分されておらず,国の費用に充てられることも予想されたというべきであるから,医局管理の寄附金に該当する寄附を地方公共団体がすることは,国と地方公共団体との間の経費負担区分を乱して地方財政の健全化を妨げる行為を防止しようという地財再建法24条2項ないし地方財政法4条の5の規定に抵触するものであった疑いは払拭できないが,他方,地財再建法24条2項違反の行為が直ちに私法上無効であるということはできないところ,前記市立病院側も医局側も前記寄附が違法であることを明確に認識しながら授受したとは断じ難いこと,前記寄附金は医局の運営のために使われ,これが医局の活動を通して地域医療の充実に寄与してきたことは否定できないこと等の事情の下では,前記寄附を私法上無効とすべき特段の事情があるとはいえないから,医局において前記寄附を受ける法律上の原因がないとは認められないとして,前記請求を棄却した事例

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