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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ク)27

事件名

 執行停止申立て事件(本案・平成19年(行ウ)第54号住民票消除処分取消請求事件)

裁判年月日

 平成19年4月3日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 住民基本台帳法8条に基づく職権による住民票消除の行政処分性
2 住民基本台帳法8条に基づく職権による消除によって住民票を消除された者がした同処分の効力の停止を求める申立てが,却下された事例
 

裁判要旨

 1 住民基本台帳法8条に基づく職権による住民票の消除につき,住民票の消除がされると,住民基本台帳法15条2項,公職選挙法29条1項の規定に基づく市町村長からの通知に基づいて同法27条1項の規定による住所を有しなくなった旨の表示がされ,その後さらに同法28条2号の規定により選挙人名簿から抹消されることにより,その者の選挙権の行使が制限されることになるところ,住民票の消除は同法27条1項の規定による住所を有しなくなった旨の表示をするための法律上の要件とはされていないものの,住民基本台帳法の規定によれば,住民票の消除がされた者は当該市町村の区域内に住所を有しなくなった高度の蓋然性が存するということができる上,同法15条2項,公職選挙法29条1項の各規定に照らすと,同法は住民基本台帳法15条2項に基づく市町村長からの住民票の消除の通知に基づいて当該市町村の選挙管理委員会が選挙人名簿に公職選挙法27条1項の規定による住所を有しなくなった旨を表示することを予定しているものということができるから,住民票の消除は,選挙権の行使の制限という法的効果をもたらす行政処分に当たる。
2 住民基本台帳法8条に基づく職権による消除によって住民票を消除された者がした同処分の効力の停止を求める申立てにつき,前記処分により,少なくとも市議会議員及び府議会議員の各一般選挙において選挙権を行使することが極めて困難にならざるを得ないのであり,憲法15条1項,3項,93条2項等によって保障されている選挙権を行使する権利が侵害されているというべきであるところ,選挙権は憲法によって保障され,当該権利又はその行使を制限することが原則として許されない国民の重要な権利であるにとどまらず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものであることにかんがみると,前記処分により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるというべきであるが,住民基本台帳法4条に規定する住民の住所とは,生活の本拠,すなわち,その者の生活に最も関係の深い一般的生活,全生活の中心を指すものであり,一定の場所がある者の住所であるか否かは,客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解されるところ,前記の者については,起臥寝食の場所としたことはなく,単に郵便物の郵送先として利用し,月に1ないし2回,郵便物を受領するために赴くにすぎない建物の所在地を住民基本台帳法にいう住所として認めることはできず,最も多く起居している野宿の場所や,月のうち2週間程度起居している数軒の簡易宿泊所等についても,生活の本拠とはいえず,同法にいう住所を見出し難いことなどからすれば,行政事件訴訟法25条4項後段にいう「本案について理由がないとみえるとき」に該当するとして,前記申立てを却下した事例
 

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