裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)58

事件名

 産業廃棄物処理業許可差止請求事件

裁判年月日

 平成18年2月22日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 産業廃棄物処分業の許可の差止めの訴えと前記処分業の用に供する施設の周辺生活者の原告適格 
2 リサイクルセンターを設置して建設廃材の中間処理業を営むとしてされた産業廃棄物の処分業の許可申請に対する許可処分の差止めの訴えにつき,同センターの設置予定地の周辺において居住し,又は事業に従事している者が原告適格を有するとされた事例 
3 リサイクルセンターを設置して建設廃材の中間処理業を営むとしてされた産業廃棄物の処分業の許可申請に対する許可処分の差止めの訴えにつき,同センターの設置予定地に隣接する建物において食品加工業を営む法人が原告適格を有しないとされた事例 
4 行政事件訴訟法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」の意義 
5 リサイクルセンターを設置して建設廃材の中間処理業を営むとしてされた産業廃棄物の処分業の許可申請について,同センターの設置予定地の周辺において居住し,又は事業に従事している者からされた許可処分の差止めの訴えにつき,行政事件訴訟法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」の要件を欠くとして,不適法とされた事例

裁判要旨

 1 産業廃棄物処分業の用に供する施設の周辺において生活する者であって,当該施設において産業廃棄物が適正に処理されない場合に生じる産業廃棄物の飛散,流出,地下への浸透,悪臭の発散又は排ガス,排水,騒音,振動等により生命,健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,都道府県知事が廃棄物の処理及び清掃に関する法律14条6項に基づく許可をしてはならない旨を命ずるにつき法律上の利益を有する者として,当該許可の差止めの訴えにおける原告適格を有するものというべきである。 
2 リサイクルセンターを設置して建設廃材の中間処理業を営むとしてされた廃棄物の処理及び清掃に関する法律14条6項に基づく産業廃棄物の処分業の許可申請に対する許可処分の差止めの訴えにつき,同センターの規模,構造,同センターにおいて処分することが予定されている産業廃棄物の種類,量,同センターにおいて行われるこれらの産業廃棄物の処理の方法,態様,処理の過程で用いられる設備機器の種類,規模,能力等にかんがみれば,同センター設置予定地に隣接して居住し,又は事業に従事している者のみならず,同センター設置予定地の南西約50メートルの場所に居住している者及び同センター設置予定地から幅員9.5メートルの道路を隔てた土地において事業に従事している者についても,同センターにおいて産業廃棄物が適正に処理されない場合に生じる産業廃棄物の飛散,流出,地下への浸透,悪臭の発散又は排ガス,排水,騒音及び振動等により生命,健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たると認められるとして,前記訴えの原告適格を有するとした事例 
3 リサイクルセンターを設置して建設廃材の中間処理業を営むとしてされた廃棄物の処理及び清掃に関する法律14条6項に基づく産業廃棄物の処分業の許可申請に対する許可処分の差止めの訴えにつき,産業廃棄物の処分業の許可に関する廃棄物の処理及び清掃に関する法律の規定が,産業廃棄物の処分業の用に供する施設の周辺において生活する者が当該施設における産業廃棄物の処理により生じる産業廃棄物の飛散,流出,地下への浸透,悪臭の発散又は排ガス,排水,騒音及び振動等によって生命,健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという利益に加えて,そのような者の所有権,営業上の利益その他の財産上の権利,利益をも個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むものと解することはできないとして,前記センターの設置予定地に隣接する建物において食品加工業を営む法人について,前記訴えの原告適格を有しないとした事例 
4 行政事件訴訟法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」とは,それを避けるために事前救済としての当該処分又は裁決をしてはならないことを命ずる方法による救済が必要な損害を生ずるおそれがある場合をいうものと解されるのであって,一定の処分又は裁決がされることにより損害を生ずるおそれがある場合であっても,当該損害がその処分又は裁決の取消しの訴えを提起して同法25条2項に基づく執行停止を受けることにより避けることができるような性質,程度のものであるときは,同法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」には該当しない。 
5 リサイクルセンターを設置して建設廃材の中間処理業を営むとしてされた廃棄物の処理及び清掃に関する法律14条6項に基づく産業廃棄物の処分業の許可申請について,同センターの設置予定地の周辺において居住し,又は事業に従事している者からされた許可処分の差止めの訴えにつき,同センターの構造,設備,同センターにおいて処分することが予定されている産業廃棄物の種類,量,同センターにおいて行われるこれら産業廃棄物の処理の方法,態様,処理の過程で用いられる設備機器の種類,能力等に加えて,同センターにおける産業廃棄物の処理により生じる産業廃棄物の粉じんの飛散,汚水の流出や地下への浸透,騒音及び振動等に起因する生命,健康又は生活環境に係る被害は,同センターの周辺地域において生活し続け,これを反復,継続して受けるに従って,その程度及び態様が徐々に増大,深刻化等する性質のものであることにもかんがみると,同センターに搬入される産業廃棄物の排出事業者として建設解体業者が想定されていること,選別ラインカバーと屋根ないし外壁との間に間隙が生じるものとされていることや同センターと前記の者らの住居又は事業場との位置関係,想定される風向等をしんしゃくしてもなお,前記許可処分がされ,同センターにおいて産業廃棄物の処理が開始されることによって直ちに前記の者らが産業廃棄物の飛散,流出,地下への浸透,悪臭の発散又は排ガス,排水,騒音及び振動等により生命,健康又は生活環境に著しい被害を受けるような事態は容易に想定し難いものというべきであり,前記許可処分がされることにより,前記の者らに生ずるおそれのある損害は,前記許可処分の取消しの訴えを提起して行政事件訴訟法25条2項に基づく執行停止を受けることにより避けることができるような性質,程度のものであるといわざるを得ず,また,同法37条の4第1項にいう「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」に当たるか否かを判断するに当たっては,営業上の損害をしんしゃくすることはできないことから,前記要件を欠くとして,前記訴えを不適法とした事例

全文