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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)24等

事件名

 公文書非開示決定処分取消請求控訴,同附帯控訴事件(原審・山形地方裁判所平成17年(行ウ)第2号)

裁判年月日

 平成19年5月18日

裁判所名

 仙台高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,同旅費相当額及び遅延利息の納入時に県を退職していた者に係る,調定収入票「納入義務者」欄,その添付書類である収入調定の説明資料「納入義務者」欄,収入調定の説明資料「収入調定額」欄,納入義務者の氏名,領収済通知書,収入票及び納入通知書兼領収証書控え「納入(返納)義務者」欄並びに県指定金融機関の作成した,領収済通知書「納入(返納)義務者」欄に記載されていた氏名,現在の職名及び前記旅費を受領した当時の職名の各情報が,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)6条1項2号本文に非開示事由として規定される「個人に関する情報」に該当するとされた事例 
2 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,前記講習会の講習申込書写し「氏名欄」に記載された氏名で二重線で抹消されたものが,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)6条1項2号本文に非開示事由として規定する「個人に関する情報」に該当しないとされた事例 
3 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,調定収入票に記載された納入義務者の氏名並びに参加申込当時及び収入調定当時の役職,支出票写し及び支出票別紙集合支出内訳表写しに記載された納入義務者の氏名,講習申込書写しに記載された参加申込者の氏名,領収済通知書に記載された納入義務者の氏名の各情報について,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)に基づき部分開示すべきであるとされた事例

裁判要旨

 1 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,同旅費相当額及び遅延利息の納入時に県を退職していた者に係る,調定収入票「納入義務者」欄,その添付書類である収入調定の説明資料「納入義務者」欄,収入調定の説明資料「収入調定額」欄,納入義務者の氏名,領収済通知書,収入票及び納入通知書兼領収証書控え「納入(返納)義務者」欄並びに県指定金融機関の作成した,領収済通知書「納入(返納)義務者」欄に記載された氏名,現在の職名及び前記旅費を受領した当時の職名の各情報につき,前記納入時に退職していた者については,もはや公務員として職務を遂行する余地がないのであるから,退職者の行為に関する情報は,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)6条1項2号ただし書ロにより開示の対象となる「公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職,氏名及び職務の遂行の内容に関する情報」には当たらず,同号本文に非開示事由として規定される「個人に関する情報」に該当するとした事例 
2 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,前記講習会の講習申込書写し「氏名」欄に記載された氏名で二重線で抹消されたものにつき,二重線での抹消は,参加者が一旦講習会への参加申込手続をし,後にこれを取り消したものと推認されるところ,これらの申込手続やその取消しも,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)6条1項2号ただし書ロにより開示の対象となる「公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職,氏名及び職務の遂行に関する情報」に当たるから,前記氏名は,同号本文に非開示事由として規定される「個人に関する情報」に該当しないとした事例 
3 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,調定収入票に記載された納入義務者の氏名並びに参加申込当時及び収入調定当時の役職,支出票写し及び支出票別紙集合支出内訳表写しに記載された納入義務者の氏名,講習申込書写しに記載された参加申込者の氏名,領収済通知書に記載された納入義務者の氏名の各情報について,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)5条3項は,請求の対象とされた文書の中に開示されるべき情報を記載した部分と不開示とされるべき情報を記載した部分とが混在している場合に,後者が容易に区分し得る限りにおいて,これを除いた他の部分を全面的に開示しなければならないとしたものと解されることからすれば,同項が独立した一体的情報を細分化し,その一部を非開示とし,その余を開示することまでを実施機関に義務付けていると解されないとしても,そのような独立した一体的な情報とは,最小限の有意な情報という意味に限定して取り扱うべきであり,また,非公開情報に該当しない情報とこれに該当する情報とに共通する記載部分がある場合,それ自体非公開情報に該当すると認められる記載部分を除く記載部分はこれを公開すべきであるとした上,前記各情報は,いずれも前記条例6条1項2号ただし書ロにより開示の対象となる「公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職,氏名及び職務の遂行の内容に関する情報」(以下「職務遂行情報」という。)に該当するところ,既開示部分と結び付いて有意な情報を構成し,非開示情報とは容易に区分することができるものであり,また,前記各氏名は,開示すべき部分と結び付くとともに非開示情報とも結び付いてそれぞれの情報をもたらしているが,氏名自体は職務遂行情報に含まれるものとして非開示情報に該当しないとして,前記各情報をいずれも部分開示すべきであるとした事例

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