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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)76

事件名

 監査委員報酬返還請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成14年(行ウ)第155号)

裁判年月日

 平成19年5月30日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市と町で組織する医療保健センターの監査委員に対する報酬の支給の一部が違法であるなどとして住民がした,同センターの関係者に対し損害の回復などを求める勧告を求める住民監査請求を,同センター監査委員が,地方自治法の規定により監査することができないものとして受理しなかったため,その翌日,当該住民が地方自治法242条の2第1項4号に基づいて提起した,同センター管理者が前記監査委員らに対し賠償命令及び不当利得返還請求をすることを求める訴えが,出訴期間の遵守に欠けるところはないとされた事例 
2 市と町で組織する医療保健センターの監査委員に対する報酬の支給の一部が違法であるなどとして,住民が同センター管理者に対し地方自治法242条の2第1項4号に基づいて提起した,監査委員に対する報酬の支払担当者らに対して賠償命令をすることを求める請求及び同センター監査委員らに対して不当利得返還請求をすることを求める請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 1 市と町で組織する医療保健センターの監査委員に対する報酬の支給の一部が違法であるなどとして住民がした,同センターの関係者に対し損害の回復などを求める勧告を求める住民監査請求を,同センター監査委員が,地方自治法の規定により監査することができないものとして受理しなかったため,その翌日,当該住民が地方自治法242条の2第1項4号に基づいて提起した,同センター管理者が前記監査委員らに対し賠償命令及び不当利得返還請求をすることを求める訴えにつき,住民の請求に係る財務会計上の行為又は怠る事実について当該普通地方公共団体の監査委員全員が地方自治法199条の2の規定に該当するなど客観的にみて監査委員による監査を行うことができない状態にある場合は,そもそも,監査委員に当該行為又は怠る事実について監査の機会を与える前提を欠くから,住民は,当該行為又は怠る事実について住民監査請求を経ることなく直ちに住民訴訟を提起することができるものと解するのが相当であるが,このような場合においても,住民が当該行為又は怠る事実を対象とする住民監査請求をすることも妨げられないと解すべきであるところ,その場合における住民訴訟の出訴期間については,監査委員が当該住民監査請求につき監査を行うことができないことを理由としてこれを却下した場合は,地方自治法242条の2第2項1号に準じ,却下の通知があった日から30日以内と解し,それ以外の場合は,同項3号により,請求をした日から60日を経過した日から30日以内と解するのが相当であるとした上,前記監査請求がされた当時の医療保健センターの監査委員にとって,前記監査請求は,地方自治法199条の2にいう自己の従事する業務に直接の利害関係のある事件に該当することなどから,前記監査請求がされた当時,同請求の対象とされた財務会計上の行為については,客観的にみて監査委員による監査を行うことができない状態にあったものということができるところ,前記監査委員が,同条の規定により監査することができないものとして同請求を受理しなかったことは,監査委員により却下の通知がされた場合と少なくとも同視することができるとして,同法242条の2第2項1号所定の期間内に提起した前記訴えは,出訴期間の遵守に欠けるところはないとした事例 
2 市と町で組織する医療保健センターの監査委員に対する報酬の支給の一部が違法であるなどとして,住民が同センター管理者に対し地方自治法242条の2第1項4号に基づいて提起した,監査委員に対する報酬の支払担当者らに対して賠償命令をすることを求める請求及び同センター監査委員らに対して不当利得返還請求をすることを求める請求につき,地方自治法203条2項本文は,非常勤の職員に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給する旨規定し,これをもって非常勤の職員に対する報酬の支給の原則とするとともに,同項ただし書において,条例で特別の定めをした場合はこの限りでない旨規定しているが,前記医療保健センターの監査委員の報酬について定めた条例(以下「報酬条例」という。)の規定は,この特別の定めに該当するところ,同条例は,医療保健センターの監査委員の職務の内容,職務上の義務及び地位等にかんがみ,その報酬を,その職務及び責任に対する対価として,月額をもって支給する旨定めたものと解されるのであって,その趣旨からすれば,報酬条例の当該規定は,地方自治法203条2項の趣旨に反するということはできないとした上,このような報酬条例の趣旨等からすれば,監査委員の職務の遂行の実績が全くない月が存したとしても,それを理由に当該期間について直ちに報酬条例により定められた月額報酬を支給しないものとしたり,減額支給したりすることはできないものと解すべきであり,また,前記医療保健センターの監査委員は,地方自治法等の規定に違反して,例月出納検査を数か月まとめて行っていたほか,定期監査を怠っていたものと認められるが,監査委員に選任された者が実質的にみて法令により規定された職務及び責任を全く果たしていなかったとまで評価することはできないから,監査委員に対する報酬の支給が地方自治法203条2項及び報酬条例が前提とする給与の根本基準に反し違法とまでいうことはできないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

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