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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ウ)309

事件名

 住民票不記載処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成19年5月31日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 出生届が受理されていないことを理由に住民票の記載をされなかった者がした,東京都の特別区の区長が同人の住民票の記載をしない処分の取消請求が,認容された事例
2 出生届が受理されなかったことを理由に住民票が作成されていない者がした住民票の作成を求める訴えが,行政事件訴訟法3条6項1号に規定されたいわゆる非申請型義務付け訴訟として,適法とされた事例 
3 出生届が受理されなかったことを理由に住民票が作成されていない者がした住民票の作成を求める義務付けの請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 出生届が受理されていないことを理由に住民票の記載をされなかった者がした,東京都の特別区の区長が同人の住民票の記載をしない処分の取消請求につき,市町村長は,原則として,出生届の受理を待って住民票の記載をすれば足りるが,住民基本台帳法施行令12条各項は,市町村長が職権により住民票を記載しなければならない場合を列挙しているにとどまり,同条各項以外の場合について,職権により記載することを禁止する趣旨まで含むものではないところ,出生届が受理されていない場合であっても,当該出生届出をした者が同届出に係る住民票の記載をあえて望み,住民票記載事項について充足している出生届が提出され,当該住民票に記載すべき事項の正確性が添付資料等によって容易に確認できる状況にあって,かつ,戸籍の記載と住民票の記載とが一致していないことにより住民基本台帳法の記載の正確性が確保されないなどの弊害が認められない場合には,当該出生届に記載された者の住民票を作成することができ,また,これを行う必要があるというべきであり,また当該住民票の作成の判断については,住民基本台帳を管理し,その記載事項について調査権を有する市町村長の合理的な裁量にゆだねられていると解すべきであるとした上,前記出生届が受理されなかったのは,同出生届出をした者が同届出書の「父母との続柄」欄の記載について,嫡出子と非嫡出子との区別をした記載をしなければならない点で出生による差別になるとの意見を有していたことなどから,同欄を空欄のまま提出するなどし,補正に応じなかったことによるものであり,それ以外の前記の者の身分事項の記載については何ら不備のない出生届が有効な出生証明書が添付された上で提出されていたこと,前記区長において住民票に記載すべき事項の正確性は明らかであったこと,前記の者について身分事項が変動する蓋然性が極めて低いと見られることなどの事情を総合すれば,前記区長が,形式的に,出生届が受理されていないことを根拠として前記処分をしたことは,その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであって違法であるとして,前記請求を認容した事例 
2 出生届が受理されなかったことを理由に住民票が作成されていない者がした住民票の作成を求める訴えにつき,前記訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号のいわゆる非申請型義務付けの訴えであるところ,前記の者は,住民票が作成されないことによって,日常の社会生活の様々な場面において市民生活上看過できない不利益を受ける上,住民票が作成されない状態が継続すれば,重要な基本的人権である選挙権を行使できないという看過できない重大な問題を生ずるものであるから,行政事件訴訟法37条の2第1項にいう「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」の要件を満たすとして,適法とした事例 
3 出生届が受理されなかったことを理由に住民票が作成されていない者がした住民票の作成を求める義務付けの請求につき,市町村長は,原則として,出生届の受理を待って住民票の記載をすれば足りるが,住民基本台帳法施行令12条各項は,市町村長が職権により住民票を記載しなければならない場合を列挙しているにとどまり,同条各項以外の場合について,職権により記載することを禁止する趣旨まで含むものではないところ,出生届が受理されていない場合であっても,当該出生届出をした者が同届出に係る住民票の記載をあえて望み,住民票記載事項について充足している出生届が提出され,当該住民票に記載すべき事項の正確性が添付資料等によって容易に確認できる状況にあって,かつ,戸籍の記載と住民票の記載とが一致していないことにより住民基本台帳法の記載の正確性が確保されないなどの弊害が認められない場合には,当該出生届に記載された者の住民票を作成することができ,また,これを行う必要があるというべきであり,また当該住民票の作成の判断については,住民基本台帳を管理し,その記載事項について調査権を有する市町村長の合理的な裁量にゆだねられていると解すべきであるとした上,前記出生届が受理されなかったのは,同出生届出をした者が同届出書の「父母との続柄」欄の記載について,嫡出子と非嫡出子との区別をした記載をしなければならない点で出生による差別になるとの意見を有していたことなどから,同欄を空欄のまま提出するなどし,補正に応じなかったことによるものであり,それ以外の前記の者の身分事項の記載については何ら不備のない出生届が有効な出生証明書が添付された上で提出されていたこと,前記区長において住民票に記載すべき事項の正確性は明らかであったこと,前記の者について身分事項が変動する蓋然性が極めて低いと見られることなどの事情を総合すれば,前記区長が,形式的に,出生届が受理されていないことを根拠として前記処分をしたことは,その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであって違法であるとして,前記請求を認容した事例

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