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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)2

事件名

 公文書非開示決定処分取消請求事件

裁判年月日

 平成18年11月21日

裁判所名

 山形地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,同旅費相当額及び遅延利息の納入時に県を退職していた者に係る,調定収入票「納入義務者」欄,その添付書類である収入調定の説明資料「納入義務者」欄,収入調定の説明資料「収入調定額」欄,納入義務者の氏名,領収済通知書,収入票及び納入通知書兼領収証書控え「納入(返納)義務者」欄並びに県指定金融機関の作成した,領収済通知書「納入(返納)義務者」欄に記載されていた氏名,現在の職名及び前記旅費を受領した当時の職名の各情報が,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)6条1項2号本文に非開示事由として規定される「個人に関する情報」に該当するとされた事例 
2 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,前記講習会の講習申込書写し「氏名欄」に記載された氏名で二重線で抹消されたものが,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)6条1項2号本文に非開示事由として規定する「個人に関する情報」に該当するとされた事例 
3 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,調定収入票等に記載された納入義務者の氏名並びに参加申込当時及び収入調定当時の役職,領収済通知書に記載された氏名及び講習申込書写しに記載された参加申込者の氏名の各情報について,前記調定収入票等の各文書に記載された情報を細分化して,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)に基づき前記各情報のみを部分開示すべきであるとはいえないとされた事例 
4 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,支出票写し及び支出票別紙集合支出内訳写し中の出張旅費請求に関する情報及び出張旅費受領に関する各情報は,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)に基づき部分開示すべきであるとされた事例 
5 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,支出票写し及び支出票別紙集合支出内訳写しに記載された職員の氏名は,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)に基づき開示しなければならないとされた事例

裁判要旨

 1 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,同旅費相当額及び遅延利息の納入時に県を退職していた者に係る,調定収入票「納入義務者」欄,その添付書類である収入調定の説明資料「納入義務者」欄,収入調定の説明資料「収入調定額」欄,納入義務者の氏名,領収済通知書,収入票及び納入通知書兼領収証書控え「納入(返納)義務者」欄並びに県指定金融機関の作成した,領収済通知書「納入(返納)義務者」欄に記載された氏名,現在の職名及び前記旅費を受領した当時の職名の各情報につき,前記納入時に退職していた者については,もはや公務員として職務を遂行する余地がないのであるから,退職者の行為に関する情報は,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)6条1項2号ただし書ロにより開示の対象となる「公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職,氏名及び職務の遂行の内容に関する情報」には当たらず,同号本文に非開示事由として規定される「個人に関する情報」に該当するとした事例 
2 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,前記講習会の講習申込書写し「氏名」欄に記載された氏名で二重線で抹消されたものにつき,二重線で抹消された県の職員は,前記講習会に参加を申し込んだとは認められないから,当該職員の氏名は,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)6条1項2号ただし書ロにより開示の対象となる「公務員の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職,氏名及び職務の遂行に関する情報」に当たらず,同号本文に非開示事由として規定される「個人に関する情報」に該当するとした事例 
3 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,調定収入票等に記載された納入義務者の氏名並びに参加申込当時及び収入調定当時の役職,領収済通知書に記載された氏名及び講習申込書写しに記載された参加申込者の氏名の各情報につき,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)5条3項は,1個の公文書に複数の情報が記録されている場合において,それらの情報のうちに非開示情報に該当するものがあるときは,当該部分を除いたその余の部分についてのみ,これを開示することを実施機関に義務付けているにすぎないものと解され,前記非開示情報に該当する独立した一体的な情報を細分化し,その一部を非開示情報とし,その余の部分にはもはや非開示情報は記録されていないものとみなして,これを開示することまでをも実施機関に義務付けているとは解されず,前記条例上,何人も,実施機関に対し,同項を根拠として,非開示情報に該当する独立した情報を更に細分化して開示することに問題のある箇所のみを除外してその余の部分を開示するよう請求する権利はなく,裁判所もまた,当該非開示決定の取消訴訟において,このような態様の部分開示をすべきであることを理由にして当該非開示決定の一部を取り消すことはできないというべきであるとした上,調定収入票等に記載された納入義務者の氏名並びに参加申込当時及び収入調定当時の役職は,同人の住所,郵便番号及び電話番号とともに,領収通知書に記載された納入義務者名は,同人の住所及び郵便番号とともに,講習申込書写しに記載された参加申込者の氏名は,同人の年齢とともに,それぞれ独立した一体の非開示情報(個人に関する情報)を形成しているといえるから,これを細分化して,前記各氏名や役職等の情報のみを部分開示すべきであるとはいえないとした事例 
4 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,支出票写し及び支出票別紙集合支出内訳写し中の出張旅費請求に関する情報及び出張旅費受領に関する情報につき,前記各情報は職務遂行情報に該当するから非開示情報(個人に関する情報)には該当せず,また,非開示情報部分と容易に,かつ,開示を受けようとする趣旨を損なわない程度に分離することができるというべきであるから,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)5条3項に基づき前記各情報を部分開示開示すべきであるとした事例 
5 県が,講習会への参加を用務として出張旅費を受領した県の職員らに対して同旅費相当額及び遅延利息の請求を行ったことに関して作成された文書に記録された情報のうち,支出票写し及び支出票別紙集合支出内訳写しに記載された職員の氏名につき,職員の氏名は,非開示情報(個人に関する情報)とその余の情報との共通の内容となっているが,職員の氏名に職務遂行情報に該当しない情報は含まれていないのであるから,前記氏名は開示すべき職務遂行情報に含まれるものとして,山形県情報公開条例(平成9年山形県条例第58号)に基づき開示しなければならないとした事例

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