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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ク)28

事件名

 仮の差止申立事件(本案 平成18年(行ウ)第81号)

裁判年月日

 平成19年2月27日

裁判所名

 神戸地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 市立保育所に入所していた児童及びその保護者らが,同保育所を廃止して民間の社会福祉法人に運営を移管することを内容とする神戸市立児童福祉施設等に関する条例(神戸市昭和33年条例第1号)の一部を改正する条例の制定は,児童及び保護者らの保育所選択権等を侵害するものであって違法であるとして,市に対し,同条例の制定をもってする前記保育所を廃止する処分の仮の差止めを求める申立てが,認容された事例

裁判要旨

 市立保育所に入所していた児童及びその保護者らが,同保育所を廃止して民間の社会福祉法人に運営を移管することを内容とする神戸市立児童福祉施設等に関する条例(神戸市昭和33年条例第1号)の一部を改正する条例の制定は,児童及び保護者らの保育所選択権等を侵害するものであって違法であるとして,市に対し,同条例の制定をもってする前記保育所を廃止する処分の仮の差止めを求める申立てにつき,行政事件訴訟法37条の5第2項にいう「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」とは,本案事件における差止判決を待っていたのでは「償うことのできない損害」を生ずるおそれがあって,これを避けるために緊急の必要があることを要件とするものであるから,「償うことのできない損害」とは,差止訴訟の要件である「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」(同法37条の4第1項)よりも損害の回復の程度が著しい場合をいうものと解すべきであり,金銭賠償が不可能な損害が発生する場合のほか,社会通念に照らして金銭賠償のみによることが著しく不相当と認められるような場合を指すとした上,市は,わずか5日間だけの極めて不十分で実質的にみれば無きに等しい性急な共同保育を経ただけで市立保育所としての前記保育所を廃止しこれを民間移管しようとしているところ,わずか5日程度の共同保育及びその他の書面等による引継ぎにより,個々の児童の個性等を把握し,その生命,身体の安全等に危険が及ぶことのない体制を確立できるとは考えられないことなどからすると,前記移管により,児童らの生命,身体等に重大な危険が生ずるばかりか,前記児童及び保護者らの保育所選択に関する法的利益を侵害するものであり,社会通念に照らして金銭賠償のみによることが著しく不相当であるから,「償うことのできない損害」があると認められ,また,前記民間移管の態様からすると,市は,裁量権を逸脱又は濫用して前記保育所選択権を侵害するものといえるから,「本案について理由があるとみえる」として,前記申立てを認容した事例

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