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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)528

事件名

 損害賠償(住民訴訟)請求事件

裁判年月日

 平成19年5月16日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 都から補助金が交付された学校法人について,理事会に無断で有価証券への投資が行われ,その結果多大な損失が生ずるなど,都の私立学校教育助成条例及び私立学校経常費補助金交付要綱上,交付決定を取り消して返還を求めることができる場合に該当する事情が存するにもかかわらず,都が補助金の返還を求めないことが,財産の管理を違法に怠る事実に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき,前記学校法人に前記補助金相当額の不当利得返還の請求をすることを都知事に対して求める訴えが,適法とされた事例 
2 都から補助金が交付された学校法人について,理事会に無断で有価証券への投資が行われ,その結果多大な損失が生ずるなど,都の私立学校教育助成条例及び私立学校経常費補助金交付要綱上,交付決定を取り消して返還を求めることができる場合に当たる事情があるにもかかわらず,都が補助金の返還を求めないことが財産の管理を違法に怠る事実に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき,前記学校法人に前記補助金相当額の不当利得返還の請求をすることを都知事に対して求める請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 都から補助金が交付された学校法人について,理事会に無断で有価証券への投資が行われ,その結果多大な損失が生じるなど,都の私立学校教育助成条例及び私立学校経常費補助金交付要綱上,交付決定を取り消して返還を求めることができる場合に該当する事情が存するにもかかわらず,都が補助金の返還を求めないことが,財産の管理を違法に怠る事実に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき,前記学校法人に前記補助金相当額の不当利得返還の請求をすることを都知事に対して求める訴えにつき,前記補助金相当額の不当利得返還請求権は,前記条例等に定められた事由が生じた場合,当然に発生するものではないが,交付決定の取消決定がされる前の段階においても,取消決定がされることを条件とした条件付債権が発生しているとみることは不可能ではなく,このような条件付債権の管理を「怠る事実」は住民訴訟の対象となるものというべきであること,また,地方自治法242条の2第1項4号の訴訟は,住民が地方公共団体の執行機関等に対し,怠る事実等の相手方等に不当利得返還等の請求をすることを求める訴訟であって,平成14年法律第4号による改正前の同号による訴訟と異なり,住民が債権の行使を怠っている地方公共団体に代位して当該債権を行使するという構造がとられておらず,不当利得の返還を請求すること自体の義務付けを求め得るとされており,このような同号に基づく訴訟の構造に照らすと,地方公共団体の債権の管理が「怠る事実」に該当するか否かを検討するに当たり,不当利得返還請求権が取消決定により現に発生しているか否かをしゅん別し,発生していない限り債権の管理を怠る事実が存在し得ないと解することは相当でないこと,さらに,支出された補助金が,いかにその趣旨に反する用いられ方をしていようと,その取消決定がされない限りは住民訴訟の対象とならないといった帰結は妥当とはいい難いことからすれば,補助金の交付決定の取消決定をして,その返還請求をしないことが債権の行使を怠る事実であるとみることが可能であるとして,前記訴えを適法とした事例 
2 都から補助金が交付された学校法人について,理事会に無断で有価証券への投資が行われ,その結果多大な損失が生ずるなど,都の私立学校教育助成条例及び私立学校経常費補助金交付要綱上,交付決定を取り消して返還を求めることができる場合に当たる事情があるにもかかわらず,都が補助金の返還を求めないことが財産の管理を違法に怠る事実に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき,前記学校法人に前記補助金相当額の不当利得返還の請求をすることを都知事に対して求める請求につき,前記要綱上の補助金交付決定の取消事由である「学校法人の運営上著しく適正を欠く収入・支出又は財産の運用がある場合」(同要綱第9の1第6号)又は「会計処理の不適正,理事会の決議に違背する等業務執行が著しく適正を欠いている場合」(同第9号)という要件は,その文言に照らし,過去の一時点における財産の運用又は業務執行の適正さではなく,都が取消しを検討する時点,すなわち口頭弁論終結時において財産運用等の適正さを欠く状況が存するか否かを問題とする趣旨と解すべきであるところ,前記学校法人においては,有価証券取引により多大な評価損を発生させた事務長を懲戒解雇するなど,その責任を明確にするとともに,その再発を防止するための各種の業務改善策を策定し,実行に移していることが認められるから,口頭弁論終結時点において,前記取消事由を認めることは困難というほかないなどとして,前記請求を棄却した事例

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