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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)68

事件名

 個人タクシー値下げ請求却下処分取消請求事件

裁判年月日

 平成19年3月14日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 個人タクシー業者からタクシー事業に係る旅客の運賃及び料金の変更認可申請を却下した運輸局長の処分に審査基準の不作成等の手続的違法があるとしてされた前記処分の取消し及び前記変更認可をすることの義務付けを求める訴えにつき,行政事件訴訟法37条の3第6項前段に基づき,取消訴訟についてのみ終局判決をした事例 
2 個人タクシー業者からタクシー事業に係る旅客の運賃及び料金の変更認可申請を却下した運輸局長の処分に審査基準の不作成等の手続的違法があるとしてされた前記処分の取消請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 個人タクシー業者からタクシー事業に係る旅客の運賃及び料金の変更認可申請を却下した運輸局長の処分に審査基準の不作成等の手続的違法があるとしてされた前記処分の取消し及び前記変更認可をすることの義務付けを求める訴えにつき,前記却下処分の取消訴訟は判決をするのに熟していると認められるものの,前記義務付けの訴えは,当該訴えに係る請求に理由があるか否かについて判断に必要かつ十分な主張,立証が尽くされていないところ,前記義務付けの訴えについて審理を続けた場合,前記認可申請に対する判断の専門性,技術性等や立証の困難等のためその審理が遅延し,迅速かつ適切な救済が得られないおそれがあると考えられ,また,現在の主張,立証状態に基づいて前記義務付けの訴えに係る請求を棄却する旨の判決をすることが,前記却下処分に関する紛争の迅速かつ適切な解決に資するということもできず,他方で,国土交通大臣ないしその権限の委任を受けた運輸局長は,道路運送法9条の3の規定に基づく一般旅客自動車運送事業の旅客の運賃及び料金の設定又は変更に係る許可権限を有する者として,専門的,技術的な知識経験を有し,判断の基礎となる事情に精通しているものと考えられるので,前記却下処分についてのみ請求認容の終局判決をし,運輸局長において当該判決の趣旨に従って前記認可申請が同条2項各号とりわけ同項3号の基準に適合するか否かについて審理,判断することとした方が,より迅速な争訟の解決に資するものと認められるとして,行政事件訴訟法37条の3第6項前段により,前記却下処分の取消訴訟についてのみ前記却下処分を取り消す終局判決をした事例 
2 個人タクシー業者からタクシー事業に係る旅客の運賃及び料金の変更認可申請を却下した運輸局長の処分に審査基準の不作成等の手続的違法があるとしてされた前記却下処分の取消請求につき,道路運送車両法9条の3第2項3号にいう「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること」とは,他の一般旅客自動車運送事業者との間において過労運転の常態化等により輸送の安全の確保を損なうことになるような旅客の運賃及び料金の不当な値下げ競争を引き起こす具体的なおそれをいうものと解するのが相当であり,そのようなおそれのある運賃等に該当するか否かについては,当該運賃等が能率的な経営の下における適正な原価,すなわち,個々の一般旅客自動車運送事業者がその事業を運営するのに十分な能率を発揮して合理的な経営をしている場合において必要とされる原価を下回るものであるか否かという観点のほか,当該事業者の市場の中での位置付け,当該運賃等を設定した意図等の諸事情を総合的に勘案して判断すべきであるところ,このような判断は,専門的,技術的な知識経験及び公益上の判断を必要とするものであるから,同号の基準に適合するか否かの判断については,国土交通大臣及びその権限の委任を受けた地方運輸局長にある程度の裁量が認められるとした上,前記運輸局長は,前記認可申請につき,前記の具体的なおそれがあるか否かを判断するに当たり,前記諸事情をしん酌せず,同法9条の3第2項につき同運輸局長が定めた審査基準に従って査定した前記認可申請に係る運賃額の平年度における収支率が運賃査定額を下回るものとなったことなどから,同項3号の基準に適合していないと判断し,前記却下処分をしたものであるから,運輸局長の前記判断は,同号の基準適合性に係る判断の専門性,技術性及び公益性にかんがみてもなお,その裁量権の範囲を超え又はその濫用があったというほかはないとして,前記請求を認容した事例

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