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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)20

事件名

 政務調査費返還履行請求控訴事件(原審・青森地方裁判所平成17年(行ウ)第4号)

裁判年月日

 平成19年4月26日

裁判所名

 仙台高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市議会議員に交付された政務調査費の支出の全部又は一部が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同議員らに違法に支出された額と同額の不当利得返還の請求をすることを市長に対して求める訴えが,監査請求前置を欠くものとはいえないとされた事例 
2 市議会議員に交付された政務調査費の支出の全部又は一部が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同議員らに違法に支出された額と同額の不当利得返還の請求をすることを市長に対して求める訴えが,一部認容された事例

裁判要旨

 1 市議会議員に交付された政務調査費の支出の全部又は一部が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同議員らに違法に支出された額と同額の不当利得返還の請求をすることを市長に対して求める訴えにつき,住民監査請求においては,対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を,他の事項から区別し特定して認識することができるように,個別的,具体的に摘示することを要するが,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して,住民監査請求の対象が特定の財務会計上の行為又は怠る事実であることを監査委員が認識できる程度に摘示されているのであれば,これをもって足りるところ,住民らは,前記議員らに対して平成15年度に交付された政務調査費の全部又は一部について,各議員ごとに疑問のある支出が含まれているという具体例を摘示するとともに,政務調査費の全部又は一部が違法又は不法に支出されているとして,その相当額の返還を求めるなど必要な措置を採るよう市長に勧告するよう求めて監査請求をしているのであり,監査対象としては平成15年度に前記議員らに対して交付された政務調査費の全部又は一部であると認識することができ,住民らにおいて前記程度以上に政務調査費の個々の支出又は使用目的のいずれが違法又は不当であるかについて具体的に指摘することが困難であったことに照らすと,前記住民監査請求においては,前記程度をもって監査対象としての特定が足りているというべきであるとして,監査請求前置を欠くものとはいえないとした事例 
2 市議会議員に交付された政務調査費の支出の全部又は一部が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同議員らに違法に支出された額と同額の不当利得返還の請求をすることを市長に対して求める訴えにつき,地方自治法100条13項,14項は,条例の定めるところにより,議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,会派又は議員に対して政務調査費を交付することができるとし,他方,政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,条例の定めるところにより,当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を提出するものとしているが,この政務調査費の制度は,議員の調査研究活動を活発にして議会の審議能力を強化するとともに,情報公開を促進する見地からその使途の透明性を確保しようとする趣旨のものであるところ,政務調査費が議員の調査研究活動を活発にして議会の審議能力を強化するためのものであることからすると,これをどのように活用するかは本来議員の自律的判断にゆだねられるべきものであるが,政務調査費は,弘前市議会政務調査費の交付に関する条例5条によりその使途が限定され,同条例6条により市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外のものに充てることが禁止されており,同条例7条により交付を受けた議員に会計帳簿の調整や領収書等の整理保管が義務付けられていることなどからすると,政務調査費が,地方自治法,前記条例等の趣旨に従って適正に使用されなければならないことは明らかであって,議員が整理保管を義務付けられている領収書等の資料に照らし,社会通念上市政に関する調査研究に資する適正な支出と認めることができない支出は,使途基準に合致しない違法な支出というべきであり,議員が政務調査活動に必要な費用として支出したことにつき,それを裏付ける資料がなく,議員においてこれを積極的に補足する説明もしないような場合には,当該議員は,当該支出が使途基準に合致しない違法な支出とされることを甘受せざるを得ず,また,ある支出が政務調査活動のためでもあるし,他の目的のためでもあるという場合,その全額を政務調査費とするのは相当ではないことは明らかであるから,条理上,按分した額をもって政務調査費とすべきであり,特段の資料がない限り,社会通念に従った相当な割合をもって政務調査費を確定すべきであるとした上で,調査旅費につき,その一部は使途基準に定められた調査旅費と認められるが,残部は,使途基準に合致しないものであるところ,どのような割合で使われたのかは資料上不明であるから,その2分の1をもって政務調査費と認め,その余は使途基準に合致しない支出と認めるのが相当であるなどとして,前記請求を一部認容した事例

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