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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)2

事件名

 損害賠償請求(差戻)控訴事件

裁判年月日

 平成20年2月20日

裁判所名

 名古屋高等裁判所  金沢支部

分野

 行政

判示事項

 1 複数回の県の旅費の支出が,公務出張の事実がないのにされた違法なものであるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,当時の県知事個人に対してされた指揮監督義務違反を理由とする損害賠償請求において請求の特定がされているとされた事例
2 旅費の支出負担行為及び支出命令が,公務出張の事実がないのにされた違法なものであるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,当時の県知事個人に対してされた損害賠償請求が棄却された事例
 

裁判要旨

 1 県の複数回の旅費の支出が,公務出張の事実がないのにされた違法なものであるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,当時の県知事個人に対してされた指揮監督義務違反を理由とする損害賠償請求において,対象となる旅費に関する支出については,監査請求期間が経過していない特定の期間の旅費の支出負担行為及び支出命令とし,損害額については,前記期間を含む期間に支出された旅費のうち,県の旅費調査委員会の公表した報告書において事務処理上不適切な支出のうち公務遂行上の経費に充てられたものとされた金額の全額として特定した場合につき,同号に基づいて代位行使される請求権は,民法上の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権であるから,財務会計上の違法行為による損害賠償請求権についても,当該行為が複数ある場合には,当該行為の性質,目的等に照らしてこれらを一体とみてその違法性を判断するのを相当とする場合を除き,各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるよう個別的,具体的に特定することを要すると解されるところ,前記旅費調査委員会の調査においては,旅費の支出について1件ごとに公務出張の事実がないのに支出されたものか否かを調査したというのであるから,各旅費支出に係る財務会計上の行為が違法であることは論をまたず,その違法性を判断するために各旅費の支出について個別的,具体的に特定する必要性はなく,また,県知事の指揮監督義務違反については,個々の支出負担行為及び支出命令ごとにその内容,金額,部局及び受認者又は専決者を異にしても,指揮監督義務の内容が異なるとは考え難く,社会的には一連一体の行為と評価されることからすれば,代位の対象となる損害賠償請求権が特定されていると解されるから,前記請求は特定されているとした事例
2 旅費の支出負担行為及び支出命令が,公務出張の事実がないのにされた違法なものであるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,当時の県知事個人に対してされた損害賠償請求につき,前記支出に係る公金の支出負担行為及び支出命令は,課長補佐が専決しているから,前記県知事が賠償責任を負うのは,自ら財務会計上の非違行為を行ったのと同視する程度の指揮監督上の懈怠がある場合に限り認められるものと解すべきであるところ,前記県知事には,県監査委員事務局職員のカラ出張の報道がされるまでは県において架空の旅費支出がされていることにつき,一般的,抽象的な予見可能性は認められるものの,架空の旅費支出の有無・状況の調査やこれを予防・防止するための具体的指揮監督措置を必要とするような具体的な予見可能性があったとは認められないから,前記報道がなされるまでの間は指揮監督の懈怠は認められないとして,前記請求を棄却した事例

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