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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)428等

事件名

 行政文書不開示決定処分取消請求事件(A事件),行政文書不開示決定処分取消請求事件(B事件)

裁判年月日

 平成19年8月28日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 租税特別措置法66条の4に基づく移転価格税制の適用の可否を検討するための税務調査,それに基づく法人税の更正処分等において取得し,又は作成された文書に記載された情報が,個人識別情報に当たるか又は一般に公にされているものを除き,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報に該当するとされた事例
2 租税特別措置法66条の4に基づく移転価格税制の適用の可否を検討するための税務調査において,国税局からの依頼を受けて公開会社が任意に提供した損益計算書及び貸借対照表に記録された情報並びに公刊物又はインターネットから収集した文書に記録された同業他社の事業内容に関する情報が,いずれも行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成15年法律第61号による改正前)5条6号イ所定の情報に該当するとされた事例
 

裁判要旨

 1 租税特別措置法66条の4に基づく移転価格税制の適用の可否を検討するための税務調査,それに基づく法人税の更正処分等において取得し,又は作成された文書に記載された情報は,個人識別情報に当たるか又は一般に公にされているものを除き,法人の取引状況や経営状況を個別具体的に,又は,その詳細を明らかにするものと認められ,こうした情報を公にした場合には,これらを取得した当該法人の競争企業において対抗措置を講じたり,取引相手となる企業において交渉に利用して有利な立場に立つなど,当該法人の経済的な利益や競争上の地位を害するおそれがあり,また,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号ただし書に規定する情報は,それを開示することにより,法人等の権利,競争上の地位,その他正当な利益を害するおそれがあると認められるものであっても,それに優越する法益を保護する上で必要と認められる場合に限り,開示に伴う不利益を当該法人等に甘受させた上で,例外的にその開示を認めようとするものであるから,そうした例外的な開示が認められるためには,その開示により人の生命,健康,生活又は財産等の保護に資することが相当程度具体的に見込まれる場合であって,当該法人等に不利益を強いることもやむを得ないと評価するに足りるような事情が存することを要すると解すべきであるところ,前記更正処分等の適否を検証する必要性は,課税手続を通じて実現されるべき事柄であり,納税者一般の手続保障や移転価格税制に関する予見可能性及び法的安定性についても一般的抽象的利益にとどまるため,行政文書の開示手続において,当該法人等の正当な利益を犠牲にしてまで,開示を実現しなければならない優越する法益が存するものとは認めるに足りず,また,行政文書の開示手続で情報の開示が受けられなかったとしても,その結果として,不当な課税処分を強いられ,それが争えなくなるなどの事情があるわけではないから,前記情報は,同号ただし書所定の情報に該当しないとして,前記情報は,個人識別情報等に当たる部分を除き,同号イ所定の不開示情報に該当するとした事例
2 租税特別措置法66条の4に基づく移転価格税制の適用の可否を検討するための税務調査において,国税局からの依頼を受けて公開会社が任意に提供した損益計算書及び貸借対照表に記録された情報並びに公刊物又はインターネットから収集した文書に記録された同業他社の事業内容に関する情報につき,前記の損益計算書及び貸借対照表は,公開会社の計算書類であって,一般に公にされていないものには当たらないが,当該文書が開示されるならば,同業他社が前記調査に協力したことが明らかになるところ,その結果,前記調査対象法人から好ましからざる感情を持たれるおそれがあり,ひいては,一般的な税務調査への協力についても支障が生じる可能性があることは否定できないのであって,その結果,税務当局において正確な事実の把握が困難になるなど,移転価格調査に関する事務の適正な遂行に支障を来すおそれがあり,また,前記の公刊物又はインターネットから収集した文書は,一般に公にされていないものには当たらないが,これらの文書に記載された情報,すなわち,同業他社の資本金,売上高,主力商品名,商品の主な販売先,販売組織の形態及び販売エリア,売上順位又は売上高の対前年比といった事業内容に関する事項について,いずれの法人の取引を比較対象取引として選定するか,又は選定しないかに関する個々の同業他社に係る国税局職員の評価は,これらを公にすれば,同国税局において,いずれの法人の取引を比較対象取引とするかという,その抽出過程及び比較対象法人が明らかになるものであって,こうした情報が明らかになれば,独立企業間価格を算定する際の税務当局の着眼点,関心事項を具体的に推測させることとなるため,国外関連者との取引を有し,移転価格税制の適用の可能性のある納税者の中には,税務調査の対策として,関係する資料を隠ぺい又は破棄する可能性も存し,その結果,税務当局において正確な事実の把握が困難になるなど,移転価格調査に関する事務の適正な遂行に支障を来すおそれがあるとして,前記各情報は,いずれも行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成15年法律第61号による改正前)5条6号イ所定の情報に該当するとした事例

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