裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
昭和60(行ウ)2
- 事件名
町長解職請求者署名簿の署名の効力に関する決定取消請求事件
- 裁判年月日
昭和60年12月27日
- 裁判所名
福島地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 地方公共団体の長の解職請求者署名薄の署名の効力に関する異議の申出に対し,地方自治法81条2項,74条の2第8項に基づき選挙管理委員会がした決定について,解職請求代表者がその取消しを求める訴訟の訴額
2 解職請求者署名薄における名のみが自署で姓が自署でない署名の効力
3 1掲記の署名について署名者本人が詐偽,強迫を無効事由として異議申出をしていない場合に,右署名簿の署名の効力に関する異議の申出に対し,地方自治法81条2項,74条の2第8項に基づき選挙管理委員会がした決定の取消しを求める訴訟において,選挙管理委員会又は被解職請求者が右無効事由を主張することの可否
4 1掲記の訴訟の原告は,同委員会の組織構成上の瑕疵又は手続上の違法を理由として,同決定の取消しを求めることができるか
- 裁判要旨
1 地方公共団体の長の解職請求者署名薄の署名の効力に関する異議の申出に対し,地方自治法81条2項,74条の2第8項に基づき選挙管理委員会がした決定について,解職請求代表者がその取消しを求める訴訟は,各署名ごとに各別の訴えを構成し,その非財産権上の請求を併合したものと解されるが,右訴訟の目的は,右長の解職請求成否の基礎事実たる有効署名の確定ということに尽きるから,その訴額については,これを実質的に解し,右各別の訴えの擬制訴額を合算することなく,1個の擬制訴額によるベきである。
2 解職請求者署名簿の署名は,その解職請求の意思の表意者が何人であるかを認めるに足りるものであればよく,これは特段の事情のない限り名のみで特定し得るものであるから,名が自署である以上その姓が自署でなかったとしても,このことは署名の効力を防げるもではない。
3 地方自治法74条の3第2項の規定は,詐偽又は強迫が署名者本人の内心にかかわる事柄であって,外形的事実のみにより容易に判定することができないものであるところから,署名者本人のその旨の異議申出のある場合に限り,その理由の存否を判断する趣旨と解されるから,1掲記の署名について署名者本人が詐偽,強迫を無効事由として異議申出をしていない場合には,同掲記の訴訟において,選挙管理委員会又は被解職請求者は,署名者以外の第三者として,右無効事由を主張することはできない。
4 地方自治法74条の2が解職請求者署名簿の署名の効力をできる限り迅速に確定させようとしていること及び1掲記の訴訟が形式上は決定の取消しを求める形をとるものの終局の目的は個々の署名の効力の確定にあると解されることからすると,同掲記の訴訟の原告は,個々の署名の有効事由あるいは無効事由を主張して当該決定の取消しを求めることはできるが,同掲記の委員会の組織構成上の瑕疵又は手続上の違法を理由としてその取消しを求めることはできない。
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