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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)131

事件名

 退去強制令書発付処分取消等,難民の認定をしない処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(行ウ)第462号(第1事件),平成17年(行ウ)第344号(第2事件))

裁判年月日

 平成19年9月12日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 ミャンマー連邦の国籍を有する者が,平成16年法律第73号による改正前の出入国管理及び難民認定法に基づく難民の認定をしない旨の処分を受けて提起した同処分の取消訴訟において,同改正法の施行後に口頭弁論が終結した場合,改正により削除された同法61条の2第2項の要件具備を,審理判断の対象とすることの要否
2 ミャンマー連邦の国籍を有する者が,平成16年法律第73号による改正前の出入国管理及び難民認定法に基づき難民の認定をしない旨の処分を受け,さらに,これに対する異議の申出には理由がない旨の決定を受けたことから,前記処分の取消しの訴え及び前記決定の取消しの訴えを併合提起した場合において,前記決定の取消しの訴えが,却下された事例

裁判要旨

 1 ミャンマー連邦の国籍を有する者が,平成16年法律第73号による改正前の出入国管理及び難民認定法に基づく難民の認定をしない旨の処分を受けて提起した同処分の取消訴訟において,同改正法の施行後に口頭弁論が終結した場合につき,抗告訴訟における行政処分の違法性判断の基準時は処分時であり,処分後の法令の改廃は司法審査に当たり考慮しないとされているが,その理由は,そのような処分後の法令に基づく新しい要件については行政庁の第1次判断権が行使されていないという点にあるところ,前記改正の内容は,60日以内の申請を義務付けていた前記改正前の出入国管理及び難民認定法61条の2第2項という手続的要件を削除したにすぎないのであるから,(1)裁判所が同項の要件具備について判断を示さずに,前記改正後の同条1項の要件具備の点に絞って当該処分の司法審査をしたとしても,既に行政庁は同項の要件の点について判断しているから,行政庁の第1次判断権の侵害の問題は生じないし,その判断によって当該処分を取り消した場合,行政庁は改めて処分を義務付けられることになるが,その場合に行政庁がよるべき法律は改正後の法であるから,改正前の同条2項の要件具備の判断は当然に不要になり,行政庁に法律に反する処分を強いることにはならず,(2)また,仮に同条1項の要件は具備されているが2項の要件が具備されていないという理由で当該処分が維持されると,改正後の法の下では難民と認定されるべきものが,認定されないという状態が生じ,改めて難民認定の申請をせざるを得ないことになり,この再度の申請においては,改正後の法が基準となるから,前記改正前の同法61条の2第2項の要件具備はもはや問題とならない一方,棄却判決には拘束力が認められないから,改めて同条1項の要件具備を一から立証しなければならず,難民であると主張する側に無用の負担とリスクを負わせることになることなどを考慮すると,前記取消訴訟において,口頭弁論終結時には削除されていた前記改正前の同法61条の2第2項の要件具備の点について審理判断する必要はない。
2 ミャンマー連邦の国籍を有する者が,平成16年法律第73号による改正前の出入国管理及び難民認定法に基づき難民の認定をしない旨の処分を受け,さらに,これに対する異議の申出には理由がない旨の決定を受けたことから,前記処分の取消しの訴え及び前記決定の取消しの訴えを併合提起した場合につき,原処分の取消しを求める訴えとこれに対する裁決の取消しを求める訴えが併合提起されている場合には,裁決が原処分に対する不服申立てに関する判断であることからすれば,原処分が取り消されれば,裁決の取消しを求める法的利益はなくなるから,裁決の取消しを求める訴えは却下されるべきものであるところ,原処分である前記処分は違法であり取り消されるべきものであるから,その裁決である前記決定の取消しを求める訴えの利益はないとして,前記決定の取消しの訴えを却下した事例

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