裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
昭和60(行ウ)7
- 事件名
原子炉設置許可処分無効確認等請求事件
- 裁判年月日
昭和62年12月25日
- 裁判所名
福井地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 行政事件訴訟法36条が無効等確認訴訟の許容される要件を限定している趣旨
2 原子炉設置許可に際しての安全審査の対象となる事項
3 内閣総理大臣が動力炉・核燃料開発事業団に対してした高速増殖炉もんじゅ発電所原子炉設置許可処分の無効確認を求める訴えにつき,右訴訟の原告らとしては,右処分の無効を前提として,右事業団に対し,原子炉施設の建設又は運転の差止めを求める民事訴訟を提起することができるところ,無効確認訴訟においては,審理の対象が原子炉の設置に関する規制法規の適合性に限定されるのに比べ,右民事訴訟においては,地元住民の生命・身体の安全等に影響を及ぼすすべての事情が判断の対象となるのであって,民事訴訟こそが紛争の抜本的解決のための有効かつ適切な手段であるから,右の無効確認訴訟は,訴えの利益(原告適格)を欠き,不適法であるとした事例
4 行政事件訴訟法36条前段の「後続処分により損害を受けるおそれのある者」の意義
5 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律23条の原子炉設置許可処分の後にされることが予定されている同法27条の認可(具体的な設計及び工事の方法についての内閣総理大臣の認可),28条の検査(内閣総理大臣の使用前検査)及び37条の認可(保安規定に対する内閣総理大臣の認可)については,いずれもその処分要件中に,右原子炉設置許可処分の無効確認訴訟を提起した者の個別具体的な利益を考慮しておらず,また,その他右の者がその後続処分によって損害を被ると認めるべき事情もないから,右の者は,行政事件訴訟法36条前段にいう「後続処分により損害を受ける者」に当たらないとした事例
- 裁判要旨
1 行政事件訴訟法36条が無効等確認訴訟の許容される要件を限定している趣旨は,民事訴訟における確認の利益と同様,無効等確認訴訟によって保護される法的利益があるか否か,及び無効等確認訴訟という方法によることが他の争訟方法(訴訟類型)による場合に比して当事者間の紛争解決にとって有効かつ適切といえるか否かの見地から,当該訴訟の訴えの利益の有無を判断するべきことにある。
2 原子炉設置許可に際しての安全審査の対象となる事項は,原子炉施設の基本設計ないし基本的設計方針にかかわる事項に限定される。
4 行政事件訴訟法36条前段の「後続処分により損害を受けるおそれのある者」には,後続処分の直接的効果として権利をはく奪され,義務を課される者ばかりではなく,後続処分の処分要件においてその者の法的利益が保護されている者も含まれる。
- 全文