裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
昭和55(行ウ)142
- 事件名
緊急裁決処分取消等請求事件
- 裁判年月日
昭和63年6月28日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 土地収用法71条は,憲法29条3項に違反しないとした事例
2 憲法29条と生活権保障
3 公共用地の取得に関する特別措置法21条1項の仮補償金による補償によって行われる緊急裁決制度が,憲法29条3項に違反しないとされた事例
4 公共用地の取得に関する特別措置法42条3項により,緊急裁決のうち仮補償金については損失の補償に関する訴えを提起できないとされていることが,憲法32条の裁判を受ける権利を害しているとはいえないとされた事例
5 新東京国際空港公団の申立てにより千葉県収用委員会がした権利取得及び明渡しの緊急裁決は,公共用地の取得に関する特別措置法20条1項所定の緊急裁決の要件を満たしているとした事例
6 新東京国際空港公団の申立てにより千葉県収用委員会がした権利取得及び明渡しの緊急裁決において,同委員会が,損失補償に関する事項につき審理が尽くされていないので,公共用地の取得に関する特別措置法20条,21条に基づき仮補償金を定めて緊急裁決をすることができると判断したことに,合理性を欠き,裁量権を濫用した違法はないとした事例
7 新東京国際空港公団の申立てにより千葉県収用委員会がした権利取得及び明渡しの緊急裁決において,同委員会が,一つの収用につき,損失補償対象者として,土地の所有者とその使用借権者の2名がいるのに,各人別の仮補償額決定を行わず,右の2人につき一括してこれを定めたことが,右使用借権者に同裁決の審理に協力する姿勢がなく,使用借権に対する損失補償額を確定できなかったことによるもので,土地収用法69条ただし書により,個別の補償決定を要しない場合に該当し,適法であるとされた事例
8 公共用地の取得に関する特別措置法20条2項が,緊急裁決の申立てを建設省令で定める様式に従い,書面ですることとしている趣旨は,専ら収用委員会の便宜を図ることにあり,したがって,申立書の様式上の欠陥は,被収用者の法律上の利益に関係ある瑕疵とはいい難いとして,収用委員会が,右の申立てにつき,緊急裁決によって実体判断をした後には,申立書に様式上の欠陥があっても,これを理由に右裁決を違法とすることはできないとした事例
9 公共用地の取得に関する特別措置法20条4項は,緊急裁決の申立てがあった日から2箇月の期間内に緊急裁決するよう努力すベきことを定めた規定であって,右期間の経過により,収用委員会は,当該緊急裁決の申立てにつき緊急裁決する権限及び義務を失うものではないとした事例
10 新東京国際空港公団の申立てにより千葉県収用委員会がした権利取得及び明渡しの緊急裁決につき,審理手続上の違法はないとした事例
11 特定公共事業認定と緊急裁決との間の違法性の承継
12 新東京国際空港第1期建設事業は,公共用地の取得に関する特別措置法7条4号所定の特定公共事業の認定要件を満たすとした事例
13 既に土地収用法上の事業認定を受けている者が,当該事業の一部についてのみ特定公共事業の認定を受けようとする場合であっても,公共用地の取得に関する特別措置法39条1項により,同法8条の適用は排除されるのであり,その結果,土地収用法24条所定の事業認定申請書の縦覧手続が行われないこととなったとしても,公共用地の取得に関する特別措置法3条所定の住民に対する事業の説明及び同法10条所定の特定公共事業認定の告示によって,関係住民は,自己の土地が特定公共事業対象地に入っているかどうかを知り,不服のある者は不服申立てをする機会を与えられるのであるから,以上の手続は,憲法31条に違反するものではないとした事例
14 新東京国際空港公団の申立てにより千葉県収用委員会がした権利取得及び明渡しの緊急裁決に対する審査請求を棄却した建設大臣の裁決に審理不尽の違法はないとした事例
15 新東京国際空港公団の申立てにより千葉県収用委員会がした権利取得及び明渡しの緊急裁決に対する審査請求を棄却した建設大臣の裁決には,理由付記の不備はないとした事例
16 新東京国際空港公団の申立てにより千葉県収用委員会がした権利取得及び明渡しの緊急裁決及び同裁決に対する審査請求棄却の裁決の取消しを求める請求が,いずれも棄却された事例
- 裁判要旨
2 憲法29条は,私有財産を,財産権として,すなわち経済的な交換価値として保障しようとする規定であって,右の保障を通じて非財産権的性格を有する生活権が保障されることがあるにしても,直接,生活権を保障する規定ではない。
11 緊急裁決は,先に特定公共事業認定がされていることを前提としており(公共用地の取得に関する特別措置法20条1項),また,特定公共事業事業認定と緊急裁決とは,いずれも特定公共事業に係る起業地の収用等という一つの法律効果の発生を目指す一連の行為であるから,先行の特定公共事業認定に瑕疵があって違法であるときは,後行の緊急裁決は,当然に違法となり,したがって,緊急裁決の取消訴訟において,特定公共事業認定の要件は,審理判断の対象となる。
- 全文