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行政事件 裁判例集

事件番号

 昭和62(行ケ)77

事件名

 選挙無効請求事件

裁判年月日

 昭和63年9月19日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 地方公共団体の議会の議員の定数配分を定めた条例の規定の違憲,無効を理由として選挙の無効を求める訴えが,訴えの利益を欠くものとはいえないとされた事例 
2 地方公共団体の議会の議員の定数配分を定めた条例の規定の違法性の判断基準 
3 千葉県議会議員の選挙区等に関する条例(昭和49年千葉県条例第55号,昭和61年同県条例第45号による改正後)2条の議員定数配分規定によれば,昭和62年4月12日に行われた同県議会議員選挙当時,いわゆる逆転現象が31通りも生じていた上,存置のの必要性につき特別な理由もないまま公職選挙法271条2項に基づく特例選挙区3区が存置された結果,議員1人当たりの人口最大区と最小区である右特例選挙区(3区のうちの1区)との間には3・98対1の較差が生じており,右較差が示す選挙区間における投票価値の不平等は,地方公共団体の議会において地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素をしん酌してもなお,一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたというベきであり,これを正当化すベき特別の理由も認められないとして,右投票価値の較差は,公職選挙法15条7項所定の選挙権の平等の要求に反するものというベきであるとした事例 
4 千葉県議会議員の選挙区等に関する条例(昭和49年千葉県条例第55号,昭和61年同県条例第45号による改正後)2条の議員定数配分規定が,右は,改正前の配分規定は選挙権の平等の要求に反するとの確定判決を受けて改正されたものであるにもかかわらず,改正の際に特例選挙区の存廃につき根本的な見直しを行わず,議員1人当たりの人口最大区と最小区である右特例選挙区(3区のうちの1区)との間の3・98対1の較差を放置したものであり,公職選挙法15条7項の規定上要求される合理的期間内における是正をしなかったものというベきであるとして,昭和62年4月12日に行われた同県議会議員選挙当時,同条項の規定に違反するといわなければならないとした事例 
5 千葉県議会議員の選挙区等に関する条例(昭和49年千葉県条例第55号,昭和61年同県条例第45号による改正後)2条の議員定数配分規定に基づいて施行された千葉県議会議員選挙の市川市選挙区における選挙の無効を求める請求につき,右選挙は違法であるが,行政事件訴訟法31条1項に示された一般的な法の基本原則に従い,選挙を無効とすることを求める請求を棄却するとともに当該選挙の違法を宣言するのが相当であるとされた事例

裁判要旨

 2 地方公共団体の議会の議員の定数配分を定めた条例の規定の制定又はその改正により具体的に決定された定数配分の下における選挙人の投票の有する価値に不平等が存し,あるいは,その後の人口の変動により右不平等が生じ,それが地方公共団体の議会において地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素をしん酌してもなお,一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは,右のような不平等は,もはや地方公共団体の議会の合理的裁量の限界を超えているものと推定され,これを正当化すベき特別の理由が示されない限り,公職選挙法15条7項違反と判断されざるを得ない。

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